上司必見!障がいを持つ部下の言いなりになっていませんか[2/2]

前回は、障がいを持つ部下を持った時の問題をいくつかの例を挙げてご説明しました。

今回は、それらの問題をどのような対処をすることで予防できるのかをお話ししたいと思います。

まず前提としてお話ししておきたいことがあります。障がいを持つ部下との関係作りにおいて、マネジメントをする者としてしっかりとイニシアティブを持ってもらいたいと考えています。

これは、会社という強い立場を利用して「頭から押さえつけてしまうような態度で接しろ。」とか「何も言わせないような関係を作ってしまう。」といった強硬な存在なってもらおうということではありません。「雇用の待遇」や「評価をする」立場の会社側がブレずに指標を示しておかないといけない存在なのだということを忘れて欲しくないということです。

① 「採用活動前の準備段階が重要」

新たに障がい者の採用をするときに、障がいのない従業員と同じ待遇で雇用をするのであれば問題ないと思うのですが、労働条件の多くは違う内容になっています。正社員ではなく契約社員。月給制ではなく時給制。時には、障がい者の勤務はフルタイムではなく短時間のみというところもあります。

企業それぞれに考えがありますし、働いている方は提示された労働条件に納得したから従事しているのだと理解しています。

例えば、採用当初は、「仕事の能力」や「周囲との関係作り」、「会社との相性」など、時間を掛けて判断する部分というのもあります。結果として、信頼して長く働いてもらうことがお互いにとって目指すところのひとつだと思います。それらを考慮した上で、「入社〇年は契約社員として雇用」「賞与の有無」「昇給の条件」といった点を予め決めておくことをお勧めします。障がいを持つ方にとって就職とは、健常者が考えているよりもハードルが高くなっています。ハンデを持つ身としては、自身の希望に沿う会社がたくさんあるわけではありませんから、転職についてはできる限りしたくないものです。ひとつのところで、自分のことを理解してもらえる環境で長く働きたいと考えています。できる事であれば、将来設計ができるような労働条件・雇用条件の提示ができるよう事前に準備しておいてほしいと思います。

そうすれば、雇用後に「思っていたことと違う。」とか「将来が不安なために仕事が手につかない。」といった問題を防ぐことができます。

② 「一般採用との違いを明確にしておく」

上記①につながる部分となりますが、「障がい者採用」と「一般採用」の違いを改めて説明し、理解をしてもらうことも大事なプロセスとなります。

人というのは、自分にとって良い話はしっかり覚えていたり、曖昧な事柄は自分に都合よく解釈をしてしまう生き物です。当初は「障がい者枠」での採用だったのが、いつの間にか「一般採用」での労働条件との比較を持ち出してしまい、空気が悪くなってしまうことがあります。

もちろん、勤務の状態を見た時に「健常者と同じ働きをする」「ほとんど配慮なども必要ない状態」といった部分が評価としてできるのであれば、待遇面の見直しを是非してあげて欲しいと思います。

そのためにも、しっかりと最初に条件提示を行うことが重要です。

③ 「雇用後の配慮や周囲の理解について本人の意向を聞いておく」

障がい者枠として雇用された場合、当然自分の障がいに対する特性や特徴をオープンにして入社してくると思います。

障がいについては、プライバシーに関わってくる点ですから、どのように話をすればよいのかというのはとても気を配る部分です。そのために、変な遠慮をしてしまったがために一緒に働く従業員への周知に気を回せなかったとすれば、混乱の原因となってしまいます。

プライバシーという点では必ず本人の同意が必要です。そのためには、職場への周知が本人や一緒に働く従業員にとってどの程度大切なことなのかをしっかりとご説明した上で、了解をもらってください。

例えば、障がいの特徴で睡眠が取れにくいことがあるので服薬をしているのですが、時々朝起きることができなくて遅刻することがある場合、面接等の時点で両者の理解と了承があったのであれば、現場にも周知しておく必要がある内容だと思います。こういった点を徹底しておかない場合、前回のコラムで挙げた問題の対処に苦慮してしまいます。

④ 「雇用後のコミュニケーションは忘れずに」

最後にコミュニケーションについて。案外、コミュニケーションが不足している職場を目にします。障がいを持つ人も様々で、人と接することが好きなタイプもいれば、苦手な方もいらっしゃいます。

中には、しっかりと成果を上げていて、普段も特に問題なく勤務されている方もいますが、安心して放置してしまっているのではないでしょうか。

人は、周囲から見ていて気になることがなくても、悩みや思いを抱えているというのは自分を創造してみると理解できるのではないでしょうか。自分のことを気に掛けてもらっているというだけで安心する方もいらっしゃいますので、コミュニケーションも面倒くさがらずに実施してもらいたいと思います。

障がいを持つ方独自のマネジメントもありますが、根本としては障がいの有無に関わらない採用準備と職場管理だと感じています。テキストのようなものがありませんので、こちらのコラムで今後も問題提起をしていきたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム