人事必見!雇用義務企業における失敗と成功を分ける共通点[2/2]

人事必見!雇用義務企業における失敗と成功を分ける共通点[1/2]

2017.01.03

毎年、厚生労働省から「障害者雇用状況の集計結果」が発表されると前回のコラムでお話ししました。

この資料では、今年は障がい者が何名働いているといったものを発表するだけではなく、企業規模ごとの法定雇用率の達成度合いであったり、産業別・都道府県別の雇用状況など、様々な視点から障がい者の雇用数を集計しています。

この中で「障がい者法定雇用率の達成状況」というものがあります。

現在の法定雇用率である2.0%をどれだけの企業が達成しているかを表したものになります。ここ数年は50.0%に少し足りずといった状況ですが、個人的にはまあまあな数字だと感じています。雇用義務のある企業の半数は法定雇用率を達成しているのですから。

障害者雇用に関する企業人事の声を聞いていますと、助成金などのメリットを挙げる一方、「障がい者の採用で募集しても人が来ない」「雇用しても長続きしない」「障がい者を邪魔扱いする社員がいる」といったネガティブなものが多いです。上手くいかないと不満に近い声をあげたくなるのも分かります。

では、法定雇用率を達成している企業の特徴っていったい何なのでしょうか。上手くいっていない企業人事にとってはとても知りたい情報だと思います。

障害者雇用に成功している企業の特徴

前回は障害者雇用に失敗する企業の特徴についてお話ししましたが、今回は障害者雇用に成功する企業の特徴をお話しします。

1.採用活動前の準備

障害者雇用を成功させている企業は、採用前の準備にしっかりと時間を掛けています。自社が障害者雇用を進めるにあたり不足している点をしり、それを補うための行動を実施しています。

例えば、「障害者雇用を上手く実践している企業や就労訓練をしている福祉事業所の見学」「採用条件の見直し」「従業員向けの研修」「実習の受入れ」など。

助成金などの周辺知識だけでなく、障害者雇用に必要となってくる雇用知識と経験を蓄積していく初級段階にあたる部分となります。

但し、今まで経験してこなかったことになりますのでこれらを独自で実施することは非常にハードルが高くなりますから、まずはアドバイスやお手伝いをしてもらえる行政機関や民間企業へご相談されるところから始めることをお勧めします。

2.取りこぼしのない採用活動

次に採用活動の点での特徴があげられます。上手くいっている企業は採用したい障がい特性をあげるのではなく、採用できる障がい特性を基準として決めます。

具体的言いますと、「軽度や若い女性の身体障がい者を採りたい」と決めるのではなく、「完全バリアフリーではないので車イスの方はNG」「業務に荷物運びがあるので上肢の障がい者はダメ」など、採用ができない具体的な理由をあげた上で、それ以外の障がい特性の人材は採用基準に該当するということです。

そうすることで、障がいにばかり目が行き過ぎたために本来してもらいたかった業務が全然できない人材だったというあるあるな失敗を回避することができます。

また、面接後の採用判断の時も希望する業務が“出来る”のか“出来ない”といった判断がすぐに出せるため、迷っている間に他社の求人を選んでしまったということも防ぐことができます。

3.今いる従業員へのフォロー

障害者雇用で上手く成果を出すためには今いる従業員への対処が非常に重要です。

自社にマッチした障がい者を採用することも大事ですが、その方が職場に定着するためには従業員の理解や協力が不可欠です。そもそも、従来から仕事に励んでもらっている従業員を大切にできない企業は障害者雇用も上手くいかないように感じます。

まず、障害者雇用に取組む上で従業員への理解を進めるために簡単な研修や勉強会を実施します。それから、実際の採用が決まった段階で、配属先となる部署の従業員に対して一緒に働くために必要となる情報伝達を含めた勉強会を開きます。特に部署への勉強会は採用される障がい者はもちろん、同僚となる従業員の方々を守るためのモノでもあります。

障がいの特性や特徴を事前に知っておくことでストレスの軽減に繋がります。障がい者と一緒に働くことで起こりうる弊害のひとつに同僚のメンタル不全があります。採用した障がい者にばかり気が向いた結果、周囲の従業員に被害が発生してしまうことが実際起きています。

あと、障がい者人材への面談実施も良く聞くフォロー活動の一つですが、周囲の従業員への定期面談も大切です。

障がい者の雇用定着を取組むにあたり、周囲がどれだけの負担が掛かっているのか、管理側だけでは分からない事実もあったりします。是非、周囲の従業員へのフォローもお願いします。

いかがでしたでしょうか。2回に渡ってご紹介しました障害者雇用に失敗する企業と成功する企業それぞれに見られる特徴。現在、世の中では労働者不足といわれる時代にも関わらず、働く能力のある障がい者人材がたくさんいます。この人材を活用するための努力をすることで労働者不足を解消できるという考え方もできます。

もう一つ、障害者雇用に成功する企業に見られる特徴がありました。それは、「あきらめない事」です。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム