【Q&A】離職を防ぐ!障がい者雇用で普段から気を付けておく3つのポイント『体調管理編』

【Q】
人事担当者として障がい者の求人・採用、配属されてからの職場のサポートをしています。
障がい者の体調管理のことでご相談があります。
求人募集にエントリーしてきた時には元気だった方が、採用して職場ではたらきだしてから体調を崩してしまう障がい者が数名いました。復職できる方もいましたが、ほとんどがそのまま退職してしまっている状況です。
雇用した障がい者の体調管理について、職場ではどのような取り組みができるのでしょうか。
良いアドバイスがありましたら教えてください。
よろしくお願いします。
《製造メーカー、従業員数約400名、人事担当者》

【A】

ご相談ありがとうございます。
今回のご相談内容と同様の相談を他の企業の人事担当者からもよくいただきます。せっかく採用した障がい者が勤務後に体調を崩してしまうというケースは少なくありません。私も支援している企業ではたらいている障がい者と定期面談を実施していますが、自分の体調に関する相談や悩みを聞かせてもらうことが本当に多いと感じています。

これまで一般的みたときに、従業員の体調管理はセルフマネジメントとして考えられてきましたので、企業が直接的に関わる機会はほとんどなかったのではないでしょうか。
しかし、忙しさが重なり疲労が強かったり風邪をこじらせるといった珍しくない状態も障がい者の場合であれば、その状態をきっかけにして大きく体調を崩してしまうことが多いに考えられます。また、体調を崩す原因もそれぞれで違っています。
職場で障がい者の特性を理解することで定着につながるのと同様に、『体調管理』面にも目を向けることで健康な状態で与えられた役割を実行することができます。

今回は、企業が気を付ける障がい者の『体調管理』についてお話をしようと思います。

①,自分の体調・健康状態を知る“習慣”を身に着ける


私が過去にお会いしたおふたりの障がい者から聞いたお話です。
おひとりは、「雨が降る日(特に気温も低い日)は気分の落ち込みを強く感じることがあり、ひどいときは業務にも影響が出るため仕事を休みます。」
もうおひとりは「毎日寝る前にその日の自分の状態を記録するようにしています。項目は『体温』『就寝時間と起床時間』『顔の火照り』『気分を5段階で表現』『その日の感想』です。毎日欠かさずに記録しておくことで体調を崩した時の原因や体調を把握することで健康な状態を維持することを心掛けています。」
このおふたりに共通しているのは「普段の状態を理解している」ことです。

体調を崩すときというのは必ず何か原因があります。原因の発見・認知が早いほど、体調への影響が少なくなります。先ずは、普段の「健康な状態」と「不健康な状態」の差に気付くこと。それから「健康な状態」と「不健康な状態」の間で何が起こったのかを見つけること。が重要になってきます。

「健康な状態」と「不健康な状態」の差に気付くためには、先ほどのふたり目の方が実践されていた「記録」が良いと思います。
例えば、会社側で記録簿を用意しておき、毎朝出勤してから仕事が始まる前に記入をしてもらってください。部署のリーダーや管理者は毎朝記入された内容を確認し、体調がよろしくない方がいた場合はすぐに声を掛けてヒアリングを実施してください。これを習慣化させることで早期に対処することができるのと同時に本人の理解にもつながります

②,周囲からの気付き

ちょっとした体調の変化を自分で認知することが難しい方もいらっしゃいます。その場合、周囲がお互いの状態を“気にする”ことで体調の悪化を早い段階で防ぐことができます。

例えば、様々な理由がストレス要因となり、適応障がいやうつ病といった精神疾患に罹患してしまった場合、遅刻・欠勤・業務上のミス・抑うつ的な態度などの問題行動が見られるようになるのですが、当事者が気づいてないことが多くあります。そのため、普段から周囲や管理者がいつもと違ったこれらの状態(シグナル)をキャッチするのはメンタルヘルス対策のひとつとして既に実践されている方法になりますので導入していただくメリットはあります。
少しでも「あれ、おかしいなぁ」「いつもと違うなぁ」と感じることがあれば、管理者に相談することで更なる悪化を防ぐことができます。

③,支援先との情報共有


障がい者の中にははたらくようになってからも医療機関・障がい者就労支援福祉サービス・カウンセラーといった専門機関からの支援を受けている方がいます。これらの専門機関は、会社では目が行き届かないプライベートな範囲のサポートを担っている役割りでもあります

採用の段階で当事者が支援を受けている専門機関に関する情報や担当者の紹介がまだであれば、これからでも遅くありませんので『長く健康にはたらいてもらいたい』という理由を伝えて、本人からの了解のもと情報を共有できる状態を作っていただきたいと思います。
もちろん上記①②で取り組んでいただく内容ともつながってきます。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム