インタビュー:特定非営利活動法人ワイルドナイツスポーツプロモーション 大塚貴之さん

2019年9月に日本でラグビーワールドカップが開催されるのをご存知の方も多いと思います。私もラグビーファンのひとりとして開催を心待ちにしています。

日本ではラグビーというスポーツの浸透は野球やサッカーに比べると低く、「ルールが分かりづらい」「危険なスポーツ」という印象が強いのではないでしょうか。
私もラグビーに出会うまでは同じように感じていましたが、高校の体育の授業でラグビーというスポーツに触れて、学んでいくにつれて奥深さを知ることになりました。バスケットボールやサッカー、アイスホッケーなど、プレイヤー同士が接触するスポーツがありますが、ルールでは反則プレイとして扱われることが多くなります。

しかし、ラグビーはプレイヤー同士の接触プレイが前提のスポーツになります。楕円球ボールを持った選手にタックルをしたり、逆にボールを持った選手がタックルにくる選手を弾き飛ばしたりなど、時にはゲームの流れで危険すぎるプレイも発生することも少なくないため、ルールが非常に厳格でレフェリーの権限も高いものになっています。おそらく、他のスポーツ以上にプレイヤーたちはルールとレフェリーに対して強い尊厳の意識を持っています。
また、危険なプレイの多いスポーツの特性上、選手たちは日々のトレーニングで体を鍛えることを欠かさず、トップレベルのプレイヤーであればセルフケアについても高い意識を持つことで、そのようなプレイにも備えているのです。

ラグビーの特徴のひとつとして「チームプレイ」が挙げられます。ゲームは1チーム15人で行われます。(野球は9人、サッカーは11人なので球技では最も多いチームスポーツとなります)ルールも厳格ですが、プレイヤーのポジションと役割についても非常に厳格さを求められます。プレイヤーそれぞれに与えられたポジションと役割の理解が不十分であった場合、試合が上手く組み立てられなかったり大きなケガをしてしまいます。
実はラグビーというのは「体と体をぶつけあうスポーツ」という印象だけが強いのですが、「戦略理解」や「チームワーク」が大切なスポーツでもあります。そのため、チーム内での『コミュニケーション』がないとゲームが成り立たないぐらい重要な役割があります。

以前にデフバスケットボール男子日本代表チームについてご紹介をしましたが、今回はデフラグビー(聴覚障がい者ラグビー)でご活躍されている自身も聴覚に障がいのある大塚貴之さんにインタビューのご協力をいただきました。
このインタビューでは、大塚さんがラグビープレイヤーとして活躍するための努力と人柄を感じることができました。

大塚貴之さんの歩みをご紹介

《学生時代》

大塚さんがラグビーと出会ったのは中学生の時。当時は難しい作戦なども意識せず、部員たちと楽しくプレイをしていました。

中学卒業後、高校に進学した大塚さんは同じくラグビー部の門をたたくのですが、そこには中学時代と違いしっかりとした戦術を意識した「勝つ」ために考え行動するラグビーが待っていました。
その時に学んだのは「プレイは任すが、必ず仲間のフォローをする」ということでした。ラグビーでは、ボールを前にパスすることができませんので、ボール持ったプレイヤーが先頭になります。他の仲間は必ずボールよりも後ろに下がり、いつでもフォローして次のプレイにつないでいくことが求められます。そのため、ラグビーは自分だけが良いプレイをすることを考えるのではなく、自分が敵にタックルされても後ろにいる仲間を信頼し、パスをつないでいく自己犠牲の精神が大切なスポーツなのです。

高校を卒業した大塚さんは、帝京大学に入学しました。当時、大学ラグビーでは敵なし(大学選手権9連覇)と言われるぐらい快進撃を続けていました帝京大学には全国からたくさんの部員が集まり、その中には高校時代から活躍する部員もいましたのでレギュラー争いは大変だったということです。
自分には聴覚障がいというハンデがあるので他の部員と同じことをしていてもダメなので人一倍の工夫と努力が必要だと考え、試合で起こりうる場面を想定した練習を取り入れ、手の空いている部員に手伝ってもらい繰り返し繰り返し練習を行った結果、レギュラーを勝ち取り試合にも出場(トライも獲得)しました。

《社会人》

帝京大学卒業後、パナソニック株式会社に聴覚障がい者では初めての総合職として入社することになりました。職場には手話のできる方もおり、不自由なく働くことができる一方で、自分でなくてもできる仕事に面白みを持つことができなくなり、「通勤をして、仕事をして、家に帰る」という生活にも疑問を感じるようになってきました。

そんな時に群馬で新しく立ち上がった「特定非営利活動法人ワイルドナイツスポーツプロモーション」から声を掛けていただき、2016年に転職をすることになりました。この法人では、ラグビーを中心にしたスポーツの諸活動を通じて、子どもたちの心身の健全な育成を図っていくことを目的としています。
転職したばかりの当初は、コーチをした経験もなくどのようにして教えれば上手く伝えることができるのかということで悩むことも多かったのですが、今では指導者としての資格も取得し、本部のある群馬県だけではなく要望に応じて、全国各地へ出向いて、「ラグビーやスポーツの楽しさ」「コミュニケーションの大切さ」についての普及活動をしています

《目指していること》

たくさんあるのですが、先ずは聾学校に通う小学生たちでタグラグビーのチームを作り、全国大会に出場させたいと思っています。
タグラグビーとは、1チーム5人でボールを持ったプレイヤーにタックルせず、腰に付けたタグを取ったらタックル成立となるので、ケガをすることもなく未経験者でもできるラグビーとして徐々に普及が進んでいます。タグラグビーをきっかけにして、ラグビーを知らない人にももっと知ってもらい、ラグビーというスポーツを伝えていきたいと思います。

また、障がい者と健聴者という枠組みを壊したいと考えています。デフの世界で生きていることで健聴者のひとたちとのかかわりが億劫に感じてしまうことがあります。(物事を伝えたり理解してもらうための努力)
これは、「障がいを乗り越える」という考え方ではなく、「障がいを理解し一緒に付き合っていく」という気持ちが重要だと感じています。私は、自分が経験したラグビーを通してそんな世の中に変えていきたいと思っています。

大塚さんありがとうございました。
今回のインタビューを通して、大塚さんという人物の魅力を感じることができました。お会いしたときは気さくで真面目な青年という印象だったのですが、その想いやこれまでの努力についてのお話を聞いていると非常に力強く頼もしい存在だと感じました。

大塚さんは、「日本聴覚障がい者ラグビーフットボール連盟」にも所属し、自身も現役デフラグビーの選手としてご活躍されています。テレビ番組などでも取り上げられています。

また、近いうちに群馬で実施されている子どもたちへのラグビー教室の模様を見学してこようと思っています。
お楽しみに。

特定非営利活動法人 ワイルドナイツスポーツプロモーション
群馬県太田市龍舞町5660 ビラホームⅡ201号
ホームページ:http://wksp.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/pg/wksp.32/posts/

特定非営利活動法人 日本聴覚障がい者ラグビーフットボール連盟
東京都港区西麻布二丁目24番地17号
ホームページ:http://deaf-rugby.or.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/JapanDeafRugby/

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム