来年2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。そのため、様々なメディアや広告で障がいのあるアスリートを目にする機会がとても多くなりました。
障がい者スポーツは非常にたくさんの種目が存在します。比較的よく知られている競技は「車いすテニス」「ブラインドサッカー」「陸上」「水泳」などだと思います。
しかし、パラリンピックの種目として実施される競技以外にも、実はもっとたくさんの障がい者スポーツがあるのをご存知でしょうか。以前にこのミルマガジンでも取材にご協力いただきました「デフバスケットボール」「デフラグビー」がそうです。
そして、今回ミルマガジンが取材した競技もパラリンピックの正式種目ではありませんが、これから障がい者スポーツとして多くの方々に認知されていく『ソーシャルフットボール』の取り組みについてご紹介したいと思います。
『ソーシャルフットボール』は、精神障がいや精神疾患、発達障がいのある方たちが参加する競技として2007年に大阪から始まり現在では全国に約130チーム(選手数約2,000名)にまで拡大していきました。
基本的なルールとしては5人制サッカーであるフットサルとほぼ同じ内容になっています。2016年に第1回ソーシャルフットボール国際大会が開催され、日本・イタリア・ペルー・大阪選抜の4チームが出場。日本代表は初代チャンピオンとなりました。
実は取材当日、「一般社団法人 大阪ソーシャルフットボール協会」に加盟している選手の方たちが約3年前から実施しているある取り組みの日だということでその現場にお邪魔することになりました。
そのある取り組みとは、「障がいのある子どもたちのフットボール教室」です。ソーシャルフットボールの選手の方たちが施設に通う障がいのある子どもたちにフットボールの楽しさに触れてもらおうというものです。普段選手の皆さんは、昼間は働いている方や福祉機関に通所している方など様々で、月に数回ある練習のために大阪府下のサッカーコートに集合し、汗を流しています。もちろんですが、コートに立っている姿を見ても障がいのある方たちだということは全く分かりませんでした。
この「障がいのある子どもたちのフットボール教室」を始めたきっかけというのが、ある障がい児福祉施設から「子どもたちがスポーツのできる環境を作ってほしい」という相談でした。
当初は、「自分たちには無理なのではないか。」と思っていたということなのですが、実際に始めてみると子どもたちと一緒に体を動かすことが楽しくなり、今では年間を通じてフットボール教室を開催しているということです。
繰り返しになりますが、ソーシャルフットボールの選手たちは精神障がいや精神疾患、発達障がいがあります。
世の中の「精神障がいや精神疾患、発達障がい」に対するイメージは「弱い」「働くことができない」「不安定」など、どちらかというとネガティブなものが多いのではないでしょうか。そういったネガティブなイメージを子どもたちにフットボールの楽しさに触れる教室を開催することで払拭したいという考えもあります。実際に障がいのある人が子どもたちにフットボールを教える姿というのは、障がい者に対する間違った思い込みや偏見を変えることができるのではないでしょうか。それは、年間を通じてフットボール教室の依頼があるということがひとつの証明になっているのだと思います。
私も自分の目で確かめたいと思いました。
今回の「障がいのある子どもたちのフットボール教室」の会場となったのは、大阪市浪速区にある「児童発達支援・放課後等デイサービス ワンスタット桜川」です。こちらの事業所では3~11歳の子供たちを対象にスポーツを通じて「受信・協調・動作統合」を身に着けられるトレーニングをマンツーマンで指導しています。
フットボール教室が始まると事前に申込をしていた子どもたちが教室にやってきました。
選手の皆さんは慣れた感じで早速子どもたちとコミュニケーションを取り始めます。先ずは、準備体操から始まり少しずつボールを使った運動に移っていきます。競技はフットボールですが、手を使っても誰も注意なんかしません。最初は緊張していた子どもたちも徐々に体を動かすことに慣れてきて、いつの間にか普段通りなのでしょう、子供らしい元気な姿を見せてくれました。
障がいのある子どもたちがフットボールや運動に触れる機会を増やしたいという相談を障がいのある選手たちが実現させ、それを継続している。選手の方々にとって子どもたちの変化がとてもうれしいということです。
フットボール教室に参加する選手たちにはアルバイト代が支給されていますので、責任を持って子どもたちにフットボールを教えています。こういったことも非常に大切なことだと感じました。
今後の構想として、教室を開催している「一般社団法人 大阪ソーシャルフットボール協会」にお話をお聞きしました。
現在のフットボール教室は放課後等デイサービスの事業所単位での開催となっているのを地域ごとに毎週の開催ができるようにしたいということです。また、競技種目に関してもフットボール以外にも様々なスポーツを学べる環境を作りたいということでした。
そうすることにより、子どもたちに選択肢を増やしてあげたいという考えからです。子どもたちの将来に精神障がい者の選手たちが関われることの素晴らしさを強く感じることができました。
近々、第3回ソーシャルフットボール全国大会が開催されます。この機会にソーシャルフットボールを観戦してみてはどうでしょうか。
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