新型コロナウイルスをきっかけに始めた取り組み『土づくり』と『養蜂』について③

前回の続き

新型コロナウイルスをきっかけに始めた取り組み『土づくり』と『養蜂』について①

2021.07.08

新型コロナウイルスをきっかけに始めた取り組み『土づくり』と『養蜂』について②

2021.07.13

「知らない=見過ごして良い事実」ではない話

実はそれだけ私たちの生活に密接な関係があるミツバチが近年はその数を減らしています。
直近数年の間でこの世から消えてなってしまうほど深刻な状況ではありませんが、上記のように我々の食を支えてくれる重要な役割を担っている生物ですから、このままの状況を放置するということは日常の暮らしに関わる影響がとても大きなものになると言われています。(1パック500円のイチゴが、10倍以上の値段になるかも)

ミツバチのはたらきの成果は私たちが口にする野菜や果物だけではありません。ミルクや食肉の原料になる牛や豚の飼料は植物が中心ですし、普段何気なく目に入る木々や草花、自然にある植物はミツバチの生態により綺麗な花や実をつけ、種を残すことができるため、生態系にも大きな影響を与えることになります。

ミツバチが減少している原因はいくつかあるのですが、最も大きな要因は「農薬」です。
農作物に大きな被害を加える害虫の駆除を目的に「ネオニコチノイド」と呼ばれる農薬の散布により大量のミツバチが姿を消しました。これは世界各国でも同様の状況となったため、欧州ではネオニコチノイド系の農薬の使用を禁止しました。ところが日本では逆に使用の規制が緩和されたため、今でも普通に散布されているというのが現状のようです。
他にも、ウイルスやダニの寄生によるミツバチの体への影響からその数を減らしているのも原因のひとつです。

昔から『養蜂』はサステナブルな仕事

『養蜂』は『土づくり』に比べて、手軽に始めることができないため実行に移すハードルは高くなります。また、国内の養蜂家さんは農業と同じく高齢化が進み、後継者不足という問題も抱えているため、年々数を減らしています。

私は、昨年の秋から『養蜂』に必要な知識や技術を身に着けるために、養蜂活動をしている団体にボランティアとして参加しています。養蜂では、「二ホンミツバチ」と「セイヨウミツバチ」の大きく二種類のミツバチのどちらかを飼育するのですが、私が参加しているところでは「セイヨウミツバチ」の巣を使った『養蜂』となります。
養蜂家は、「ミツバチにたくさんのハチミツを貯めてもらうこと」を目的として、ミツバチが元気に蜜を集めるためのあらゆるサポートを年間通して行うのが仕事です。

例えば、

《春》

  • シーズン本番を迎えて、蜜を集める働きバチの数を増やすために産卵が活発化。併せて蜜の貯蔵が始まるので、産卵&貯蔵できるスペース(巣板)を確保する。
  • 分蜂と呼ばれる巣別れが起こるため新しい巣箱への移設作業。(失敗すると逃げられハチ数が減少し、貯蔵量に大きく影響)

《夏》

  • どんどん貯蔵されるハチミツを採取し、産卵&貯蔵スペースをさらに確保。
  • 天敵であるスズメバチの駆除。
  • 《秋》

    • 越冬に向けた準備。(産卵数の減少に伴い、ハチ数も減少)
    • 広げていたスペースをハチ数に合わせて狭めていく。

    《冬》

    • 凍死しないように一定の温度管理。
    • 餌となる蜜の代わりに給餌を行う。

    などがあり、他にも年間を通してダニの駆除や巣箱の掃除や手入れなど、コマメな管理が必要になります。
    当然、自然にいる生き物ですからこちらが思っている通りに行かないこともたくさん発生しますので、農業と同じく経験値と知識が必要になります。


    未来につなげる

    『養蜂』を始める目的は2つです。
    ひとつは『土づくり』と同じく、ミツバチの減少は私たちの生活に大きな影響を与える社会課題だという認識のもと、環境保護として取り組みたいと考えています。
    もうひとつは、事業化させて障がい者のはたらき先にします。『養蜂』で行う作業のうち、どうしても生き物であるためその時の状況判断を求められることも多く、障がい者に適した仕事というのは限られてしまいます。
    そこで、採取したハチミツを使った「お菓子」の製造・販売までを一括りにした事業モデルを作ります。

    実際に千葉県にある就労系支援事業所では、『養蜂』事業による就労訓練を実施しており、地域ぐるみで障がい者の自立に向けた取り組みを行っています。

    レポート:特定非営利活動法人 『はぁもにぃ』

    2020.11.10

    詳しく知らなかったミツバチの生態ですが、ボランティア活動を通して得られる知識は非常に興味深く、毎回発見があります。

    例えば、ミツバチはピラミッドの頂点にいる女王バチ、巣内の仕事や蜜を集めてくる雌の働きバチ(全体の90%)と雄バチ(全体の10%)で構成されています。雄バチの役割りは巣外での女王バチとの交尾のみで普段は餌を食べるだけの役割りなため、蜜が少なくなる秋以降は巣から追い出され餓死してしまいます。(可哀そうですが、自然界ではそういう存在です)

    働きバチが生涯で集めてくる蜜の量は小さじ一杯分(5g)程度といわれています。国内で販売されているハチミツの約90%は海外からの輸入品ですから、国産100%のハチミツが高い値段で販売されているのも納得です。また、ハチミツの特徴は、糖度が80%以上、栄養価も高く抗菌作用もある上、賞味期限がありませんので正にスーパーフードといえそうです。



    今回ご紹介しました2つの取り組みは、どちらも「私たちの暮らし」「未来のこども」に大きな関わりとなる存在だと改めて気づくことができました。
    私たちができる形で持続させ、そこに障がい者の活躍できるところを見つけられればと思い、準備を進めています。

    引き続き、ミルマガジンにて取り組みのご紹介をしたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム