レポート:東海テレビ放送株式会社 公共キャンペーンCM『見えない障害と生きる。』

近年メディアに取り上げられる機会が多くなった「発達障がい」。ワードとしては知っていても詳しいことは分からないという方が多いのではないでしょうか。
「発達障がい」に対する認知が徐々に増えてきていると感じつつ、発達障がい者が暮らしやすいと思える世の中になるまではもう少し時間が必要だとも考えます。

東海地域にあるフジテレビ系列の放送局である「東海テレビ放送」では、年に一回「公共キャンペーン」として、掲げたテーマに基づいて映像を制作し、放映しています。同社が2019年に取り組んだテーマは『見えない障害と生きる。』です。これは、一見して分かりづらいと言われている「発達障がい」のある人たちを取材し、当事者が感じていることや日常生活にある普段の姿を見てもらうことで障がいのことを伝えるドキュメントタッチの映像になります。

ミルマガジンでは、『見えない障害と生きる。』のプロデューサー 桑山知之氏に映像制作についてのお話を聞いてきました。

「公共キャンペーン」CMについて

《話・桑山さん》
2011年からスタートしたこの企画は、日本民間放送連盟賞のCM部門への出品に関連して、毎年5月末を期日にあるテーマに沿った映像を制作し放送しています。「伝える」ということを仕事にしている我々として、メッセージ性の強い映像制作を念頭に2014年からはドキュメントタッチの映像にシフトしました。これまでに取り上げたテーマは「戦争」「LGBT」「テレビ報道」といったものでした。

「発達障がい」をテーマにした制作の経緯

私がプロデューサーとして担当することになったのが2018年からでして、2年目の2019年に「発達障がい」をテーマにした『見えない障害と生きる。』を制作しました。「発達障がい」のことを全く知らなかったのですが、ご自身が発達障がいである漫画家の「沖田×華(おきたばっか)」さんを取材したことが知るきっかけでした。沖田さんの発達障がいの特性が自分の目にはとても新鮮に映り、人としてとても魅力的な方だと感じました。

当初、制作にあたり100ほどのテーマ候補を出し、その中から絞り込む作業を進めていきました。最終的に「発達障がい」と「カワイイ」のふたつの候補まで絞り込み、協議の上に「発達障がい」を選んだのですが、「発達障がい」を伝える表現の中に「カワイイ」があっても良いのではないかと考えるようになったのも理由だと思います。

©東海テレビ放送

制作担当者の想い

発達障がい者やそのご家族への取材では断られることもありましたが、その一方で直接お話を聞く中で「自分のことを伝えたい」「知ってもらいたい」という想いのある方たちも多いということ知りました。

私たちが普段から意識しているのは「ありのままを伝える」ということです。その一方で、今回の「発達障がい」を伝えるときに表現される「片づけられない」「文字が読めない」「苦しみは見えない」は、どうしても障がいが原因として感じられる「辛さ」「しんどさ」「悲しさ」というマイナスなイメージが先行して伝わってしまいます。そのため、当事者やご家族の抱える問題とありのままの姿の両方が分かる映像制作を心掛けることで、障がいの暗い面だけが伝わらないようにしました。

これまで「発達障がい」というテーマにした番組は少なかったと思います。「発達障がい」というのは「見えづらい」障がいになります。これは、制作側にとって「映像化しづらい」ため、どうしても番組として取り上げることを避けてしまう側面があります。
しかし、今回『見えない障害と生きる。』を放送することでこの発達障がいのことを知らなかった人たちに少しでもその存在を分かってもらうきっかけになったのではないかと感じています。僕自身がこの取材を通して発達障がいのことを知ったように。

©東海テレビ放送

©東海テレビ放送

期待する世の中の変化

放映後、取材にご協力いただいた方々の反応もSNSなどにあった視聴者の声も、私が思っていたよりも良好な反応をいただいたように思います。
今回の映像を通じて、障がいの有無に関係なく「他と違っても良い」「得意不得意があっても良い」という認識を広めたいと感じました。私自身もコンプレックスを抱えています。今の世の中は人に対して「オールマイティ」「ゼネラリスト」を求めています。それよりも、「自分が持つ人と違った部分」を強みにして周囲からも認められるような世の中になるように制作していきたいと思います。

今回をきっかけに、一過性のものではなく継続したテーマとして伝えていきたい。これは、東海テレビとしても私個人としても引き続き報道していきたいと強く感じています。

©東海テレビ放送

©東海テレビ放送

今回の取材を通して「伝えることの大切さ」というものを改めて感じました。民間放送で「発達障がい」をテーマにした番組の制作というのは、今現在多くないと感じます。桑山氏の取材にもありました「見えづらい」障がいという部分も、それ故に伝えてほしいというのが関わる人たちの想いだと感じます。
また、この『見えない障害と生きる。』はたくさんの賞を受賞されました。(下記にご紹介)
是非、東海テレビ並びに桑山氏の今後のご活躍を応援したいと思います。ご協力ありがとうございました。

『東海テレビ放送株式会社』
愛知県名古屋市東区東桜一丁目14番27号
URL:https://www.tokai-tv.com/index.html

映像「東海テレビ公共キャンペーン『見えない障害と生きる。』」
https://youtu.be/hFppNU0ONQo

2019年 日本民間放送連盟賞 CM部門 最優秀賞
https://j-ba.or.jp/category/awards/jba103482#TVCM

2019 59th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS ACCゴールド
http://www.acc-awards.com/festival/2019fes_result/filma.html

第58回JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール 経済産業大臣賞
https://www.tfc.co.jp/news/2020/01/1207.html

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム