毎年、年末から年明けの時期に厚生労働省から発表される「障害者雇用状況の集計結果」を見ると、人事を始め雇用の担当者の方々は良くご存知だと思いますが、企業における障がい者採用の数が年々増加傾向にあることが分かります。
内訳では、雇用数は約33万人の身体障がい者をはじめ、約11万人の知的障がい者、最後は約5万人の精神障がい者という順番になります。但し、障がい特性ごとに前年からの伸び率で見た場合は、精神障がい者が約20%増で最も多く、次に知的障がい者の約7%増、最後が身体障がい者の約2%増という数字になります。
これは、特に都心部などの企業が多い地域に見られるのですが、法定雇用率の引き上げに伴い障がい者求人の数が増加しているため、採用競争が過熱状態となっています。これまでのように身体障がい者や知的障がい者の採用だけでは必要数に間に合わない状況となり、精神障がい者・発達障がい者も積極的に採用していくことで法定雇用率を達成しようとする動きの表れなのです。
そういった動きの一方で、障がい者の離職率も問題視されているのも事実です。
特に精神障がい者の離職率は身体や知的障がい者と比較してもかなり大きな数字となっています。私の見解ですが、精神障がい者・発達障がい者の離職率が高い理由は、本人たちに原因があるというよりも、企業側による障がい者への理解不足が招いた結果ではないかと考えています。精神障がい者・発達障がい者の採用には事前の準備が重要になってくるのですが、実際にどのような準備が必要になってくるのかを知らずに進めてしまっている企業が多いように思います。時には、社外にある専門機関を友好的に活用することでハードルを越えていくことができます。
また、最近では「サテライト就労」という障がい者の働き方が認知されてきました。これまでは、企業の本社や支店で採用をされた障がい者は、会社に通勤をして一般の従業員と同じように働くというものでした。
「サテライト就労」というのは、会社に出勤するのではなく、雇用主である企業がサテライト(出張所)契約をした場所に出勤をして働くというものです。
「サテライト就労」を活用する企業側のメリット
- 知識や経験が少なくても安心して障がい者を採用できる
- 職場では専門スタッフによるケア体制が充実している
- 「サテライト就労」を通じて人事担当者が経験値を増やすことができる
「サテライト就労」を活用する障がい者側のメリット
- 通勤することが難しい障がい特性でも就職ができる
- 常駐の専門スタッフがいるので安心して働くことができる
- 会社の雰囲気では力を発揮できにくい障がい者でも勤務できる
今回、ご紹介する企業は名古屋市にある株式会社アルファプランニングが運営する障がい者のサテライト就労『アルファスマイル』です。
アルファスマイル
取材の日は代表取締役社長の神田さんにサテライト就労『アルファスマイル』のご説明をいただきました。
本業は愛知県を中心に全国に8拠点ある株式会社アルファスタッフという人材会社を母体として事業を運営しており、この『アルファスマイル』は2018年4月にオープンをしたばかりですが、現在4社と契約し13名の障がい者の方たちが働いています。
- 企業にはサテライトブースの契約をし、障がい者の雇用を実現していただきます
- 雇用された障がい者の方たちには『アルファスマイル』で用意した仕事に従事していただくことも、自社の業務に就いていただくことも可能
- 契約企業は定期訪問や通信機器による面談で障がい者とのコミュニケーションを図ります
- 常駐の専門スタッフによるケアで不測の事態にも即対応いたします
この事業を始めたのは、本業である人材事業で契約のある企業から「障害者雇用」に関するご相談がきっかけでした。特に「障がいのある方たちにしてもらう業務の切り出し」に困っている企業が多かったことです。そこから準備と経験を積むことに時間を掛けて、ようやくスタートすることができました。
現在では、親会社である株式会社アルファスタッフと雇用主である企業が業務委託契約を結び、企業ごとの各オフィス内で勤務する障がいのある方たちに、自社業務として行っていただきます。アルファプランニングは、業務が円滑に進むよう、サポートを行っています。
また『アルファスマイル』の強みは、
- 専門スタッフによるサポートがあるので、勤務者のほとんどが精神障がい者にもかかわらず職場定着が実現できています(支援学校での勤務経験者も従事)
- 系列の就労継続支援A型事業所でのサポート基準を踏襲することで、個々の障がい者に最適なケアを提供できます
- 数十社の就労系支援機関とのつながりのもと、常時40~50名の勤務希望者がいます
最近では、サテライト就労の見学希望者も増えてきており、障がい者本人や支援事業所をはじめ、親御さんや行政機関からの見学申し込みにも積極的に受付することでサテライトという働き方の理解を深めていくように努めています。
今後は、こちらの地域で多くの障がい者就労が実現できれば、他の地域にもサテライト就労を広めていきたいと考えています。
今回『アルファスマイル』を見学して感じたのは、障害者雇用の選択肢としてサテライト就労がようやく認知され始めてきたということです。
それは、一部の大企業だけが活用するような従来からあるサテライト就労ではなく、雇用義務のある中小企業が様々な事情で雇用が進めることができなかったのが、専門的なサポートを受けながら経験値を積んでいくことができる。また、障がい者にとっても一般企業で働く能力があるにもかかわらず障がい特性が理由で就職できなかった方たちが、安心して社会参加できる場に出会うことができた。という事実です。
今後の活躍が気になる企業でした。
『アルファスマイル』でのサテライト就労に関するご相談につきまして、詳しくは下記からお問い合わせください。