人事なら知っておくべき”障がい者の職場定着を支援するアレコレ”(職場勤務編②)[5/5]

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人事なら知っておくべき”障がい者の職場定着を支援するアレコレ”(職場勤務編①)[4/5]

2017.03.14

前回、障がい者の雇用定着が職場に浸透されるためには元々いる従業員への気遣いが重要になるという点に少し触れました。

従業員が障がい者に対する理解や協力的な姿勢を持ってもらえることで、障がいの度合いが軽度にもなり得ます。

今回は「人事なら知っておくべき”障がい者の職場定着を支援するアレコレ”(職場勤務編)」の続きとして、ポイントを従業員への配慮を中心にお話ししていきたいと思います。

3.障がい者情報の連携と研修は必須

過去にお会いした障がいをお持ちの方々から聞いたお話しの中で就職後に辛いと感じた出来事で多かったもののひとつが「情報の連携不足」です。

これは、自分の障がいの特性や特徴がしっかりと部署に連携されていなかったために、適切な配慮やミスマッチな業務配置が起こり、職場で邪魔な存在・浮いた存在となり、最悪の場合は退職してしまったということです。面接等の段階では人事担当者に自身のことをお話しし、理解をしてもらった上で雇用へとつながっていきます。

当然、障がい者にとってはこの時に必要な配慮についても伝えてありますので安心して働き始めるのですが、部署の人たちにきっちりと情報が伝達されていないために、サポートを受けられず、出来ない仕事を任されてしまった結果として邪魔者のような扱いを受け、ストレスと会社への不信感を感じながら退職したケースが非常に多いです。

障がい者を新たに雇用することが決まりましたら、その方の情報を配属する部署の従業員に対して連携することが必要です。

「障がいの特性(どのような障がいなのか)」「特徴(〇〇が出来ない、〇〇をすることが得意)」「配慮(仕事を頼むときには締切日時を明確に)」などの項目を決め、関係する従業員に漏れなく伝えます。但し、この時点で完璧な説明を準備するのではなく、本人から要望のあった配慮や情報が周囲にしっかりと理解される程度あればよいと思います。おそらく、実際に働く中で発生する事項に対しての対処法なども出てきますので。

また、障がいによっては詳しい説明が必要な特性のものもありますので、その場合は併せて障がい特性に関する研修を人事主体で実施することも必要となります。

これらは、障がい者本人はもちろんですが、元々いる従業員にとってもストレスの軽減や障がい者に対する間違った印象を持たないようにするための対処となります。会社として、障がい者と従業員の両方にとって居心地の悪い職場環境を放置していくということは安全衛生の面でも問題のあることになります。ここはしっかりと準備をすることが大切です。

4.就労後のフォローは健常者にも

障がい者の方が雇用された後、職場の定着を目的とした面談によるフォローは大変有効な手段のひとつです。

主には、月1回の頻度で職場の管理者や福祉サービスから採用された方であれば支援スタッフによる面談を実施していることが多いです。また、外部の専門家によるカウンセリングを導入しているケースもあります。職場での悩みや要望を聞くことで環境改善に役立てています。

実はこの定期的な面談は障がい者だけではなく、周囲の従業員に対しても実施することで違った成果を生みます。

例えば、障がい者と一緒に働くことでのストレスの有無や業務への影響などを職場のマネジメントとして把握することができるというメリットが生まれます。

また、障がい者の職場での振る舞いや成果などを客観的な目線で知ることも大変重要なことになります。仮に障がい者に関するトラブルが発生した場合、本人だけの聴取ではなく周囲からの話も参考として聞くことになると思います。その際には発生する前の職場がどんな風であったかを知っておくことも大切になってきます。

但し、粗探しをするということではなく、正しい理解や適切な配慮がなされているかを常に確認しておくということです。

5.雇用後もハローワークと連携

採用時には求人の相談などでハローワークを活用するというのは以前の回でもお話ししました。実は、求人以降の雇用後もハローワークとの連携はトラブルの回避という点で重要となります。

会社として十分な配慮を行っていても、障がい者本人の受け取り方によってはミスマッチにつながり、退職をしてしまうこともあります。

その場合、最悪のケースでは、障がい者による労働局への相談から企業が指導や注意を受けることもあります。そうなると、ハローワークからの印象は悪くなり他の行政機関や福祉サービスからの人材の紹介などにも影響が出るかもしれません。そのようなことを防ぐためにも、雇用してからもハローワークの窓口に対して雇用状況の報告を行ってください。上手くいっている内容であれば企業の評価は上がります。上手くいかない場合であってもしっかりと配慮をしていたのであれば、責められることもほとんどありません。

ハローワークは障害者雇用を進める上で終始活用をしていく大きなポイントとなります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。計5回に渡って雇用定着のためのポイントをお話ししてきました。各企業によって具体的な取組み方法は違ってきますが、基礎となる部分は共通すると考えています。

障害者雇用が会社の為(法定雇用率助成金罰金の為)や、障がい者の為だけではなく、周囲の従業員にとっても有益な存在としての役割であるという理解が広がれば障害者雇用は難しい取組みでなくなると思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム