最近は、民間企業の障がい者関連サービスをたまに見かけるようになりました。
障がい者本人に対するものや、障がい者家族向けのもの、障がい者が働く企業の利用するサービスなど、障がい者やその周囲をサポートする民間サービスがあります。ミルマガジンの編集長を務める上前氏も企業向けに障害者雇用コンサルティングサービスを行っています。
そんな時代ですが、未だに障がい者を相手にビジネスするということに抵抗感を抱く人も少なくありません。
何を隠そう私もそうでしたから、気持ちは良く分かります。私が初めて障がい者ビジネスというものを耳にした時、気持ちがざわついた事を覚えています。当時の私と同じ様な思いや悩みを抱えている人向けに、今回は障がい者ビジネスと障がい者の未来について説明したいと思います。
障がい者ビジネスが障がい者の未来を決める!
障がい者に関わるサービスを提供する民間企業の皆さんに知って欲しいことは、負い目どころか障がい者の未来を背負っているという自負を持って貰いたいと思います。
「障がい者からお金を取るなんて酷い」「障がい者をビジネスに利用するなんて」などという外野の野次は、上っ面の正義感でモノを言っているだけなので無視しましょう。彼らは、障がい者をいつまで経っても可哀想な存在でいさせようとします。
私が自信をもって、障がい者の未来は障がい者ビジネスが握ると言い切れるのには3つの理由があります。
1.障がい者ビジネスが栄えると、障がい者の暮らしが便利になる。
高齢者の暮らしは、ここ10年で随分便利になったと思いませんか?
高齢者用の設備はトイレやお風呂だけでなく、キッチンやパソコンにまで広がりました。中には、高齢者向けのスポーツ用品などもあります。さらには、高齢者向けの看護師が同乗する旅行ツアーや高齢者専用マンションまで日に日に高齢者の生活は便利になっています。
では、高齢者の暮らしが便利になったのは、なぜでしょうか?
それは、団塊の世代が高齢者となることを理由に2005年頃から急速に高齢者ビジネスが発展したからです。さらに言うと、高齢者経済が認知され、これがお金になると感じた人が多かったからこそ、高齢者ビジネスは多くの人の手により発展し、高齢者の暮らしは便利になったのです。ビジネスが育つことは、その対象となる人にとっては享受できうるメリットが大きくなることなのです。
これは、障がい者でも全く同じです。
障がい者経済が認知され、ビジネスチャンスと捉えて、多くの民間企業が参入してくることになれば、障がい者の暮らしは確実にもっと良いもの・もっとメリットあるものになるのです。
もっと便利な、もっと楽しい、もっとラクな、など各々のコンセプトのもと、ビジネスは常に新しいものを生み出します。障がい者の身の回りには、まだまだ不満・不便・不安がたくさんあります。この解消には、もっと障がい者ビジネスに発展してもらう必要があります。
2.障がい者ビジネスが拡大することは、選択肢の増加に過ぎない。
「障がい者からお金を取るなんて」と考えている人は、ビジネスを舐めています。
ビジネスを作ったって、メリットが価格を上回らない限りは、お金は取れません。くだらないサービスでもお金が取れるなんて事はありませんから安心してください。利用するかどうかは、義務ではなくあくまで任意で各自が決めれば良いのです。
障がい者ビジネスへの参入者が増えることは、障がい者にとって選択肢が増えることを意味します。
選択肢が増えれば増えるほど、自身にとって最適なモノやサービスを選択できる可能性が高まり、さらにはその価格も競合により安くなります。当然、その裏では障がい者や人事から支持されなかったサービスは消えていくことになります。
「障がい者がお金を払ってでも欲しい」というモノやサービスしか生き残れない限り、「障がい者からお金を取るなんて」と考える事がいかに無意味かということです。
3.障がい者ビジネスが発展しないと、健常者との差がもっと広がる。
障がいを考慮しないサービスは、当たり前の様に日々発展しています。あれもこれも2、3年経てば古いと呼ばれる世の中になりました。
それに対して障がい者ビジネスは、「障がい者にも使える」的なおまけ要素の強いものが多く「◯◯障がい専用」「◯◯障がい向け」というものは少なく、あまり発展していません。まだまだ法律による義務を果たす程度のサービスが多いのが実情です。
もし、このまま障がい者ビジネスが発展しなかったらどうでしょう。健常者が利用する障がいを考慮しないサービスに対して、どんどん置いていかれることになります。障がい者にとって使い勝手が悪いものを使わざるを得ない環境におかれた結果、邪魔モノ扱いされてしまっては、社会の壁は高くなる一方です。
つまり、時間が経てば経つほど差が広がっていくことになるのです。
まとめ
これが、私が障がい者の未来は障がい者ビジネスが握ると言い切る3つの理由です。
多くの人が子供の頃に、お金を貰うことに罪悪感を植え付けられてしまったせいで、障がい者とビジネスを繋げることに抵抗感が出てしまったのだと思います。
しかし、実際には正反対で障がい者をビジネスから切り離すことこそが、障がい者の楽しく便利な未来を制限することになるのです。
一社でも多くの会社が、一人でも多くの人が、障がい者ビジネスに魅力を感じ参入することで、障がい者の未来は明るいものになるはずです。
だから、雇用義務のある企業が、助成金や罰金の為に障がい者を雇用することも、障がい者を雇用するキッカケとして否定的に捉えるべきではありません。そこから障がい者の社会進出の可能性が拓けるわけですから。