障がい者雇用を推進している行政機関は厚生労働省だけではありません。地方自治他でも独自に企業の障がい者雇用を推し進める事業を行っています。
群馬県ではテレワークによる障がい者雇用を企業で実践してもらうための事業をスタートさせました。
今回ミルマガジンでは、令和3年度にこの事業にエントリーした2社と群馬県の担当者に実施しました取材につきまして3回に分けてご紹介します。
前回に続き今回ご紹介するのは群馬県前橋市に本社を置く株式会社物流サービスの取り組みになります。同社では以前から障がい者の雇用に取り組みたいと考えている中、今回のテレワークによる障がい者の雇用事業にエントリーをすることになりました。その結果、どのような雇用となったのでしょうか。
当日は代表取締役 大谷内光男氏と障がい者雇用を担当された 周藤吉紀氏から群馬県のテレワークによる障がい者雇用事業へのエントリーから取り組みについてのお話をお聞きしました。
株式会社物流サービスのご紹介
《話・大谷内氏、周藤氏》
群馬県内の配送を中心に、倉庫管理、ディーラーへの部品発送などの自動車関連、コンビニエンスストア会社の社内便(本部からお店へ、ポップや書類の輸送)、メディカル事業として病院からの血液検査・検体を検査会社へ納品などが現在の主な取り引きとなっています。
地域密着で群馬県内をぐるぐるまわり、毎日1,000件以上のお客様先に伺っています。
テレワークでの障がい者雇用に取り組まれたきっかけ
以前から当社では障がい者雇用を検討していました。
例えば、倉庫内で障がい者にできる仕事がないだろうかと考えていたこともありましたが、実際に障がい者のはたらく職場を見学したが自社でマッチする仕事がないという印象を受けました。そのためなかなか当社で雇用を実践することができていない状況にありました。
そのような中、今回の群馬県での事業はテレワークでの障がい者雇用だと耳にし、丁度我々のところでもテレワークによる勤務を始めていた時期で、非常にタイミングが良く障がい者の雇用と組み合わせて進めることができるのではないだろうかと考えていました。
当社の周藤さんが中心となって進めていくことになったのですが、初めてのこともあり仕事をやりながらの取り組みはとても大変でした。
何から取り掛かれば良いのか分からなかったのですが、この事業の伴走者である株式会社テレワークマネジメントからのアドバイスのもと、先ずは障がい者の方に担当してもらう仕事の切り出しから取り掛かりました。もちろん最初は戸惑うばかりで、総務・経理の仕事を中心に切り出しを始めたのですが、どうしようと感じることが多く、事業の期限もあるため焦ってしまうことも少なくありませんでした。
求人から採用までのプロセスもアドバイスの通り、説明会→募集開始→面接→採用と進め、思っていたよりもスムーズでした。ありがたいことにエントリー者が多かったため選考には時間が掛かりました。
選考ではPCの操作試験、面接でお会いした時に当社の雰囲気に合った方などを考えた結果、静野さんを採用することになりました。
テレワークによる障がい者雇用を実践してみて
現在、静野さんが入社されて8ヶ月が過ぎました。入社当初はリモートでの勤務のため周囲とのコミュニケーションについて不安だったため、オンラインで常時接続する状態にしておき、いつでも相互で声を掛けることができるようにしました。今はオンラインで朝礼に参加し、会議や打合せをGoogle MeetやDiscordで実施しています。
仕事で関わる人たちはスムーズにコミュニケーションが取れています。次の課題は普段仕事で関わることが少ない別の部署の人たちとのコミュニケーションです。まだ、テレワークではたらいてもらっている静野さんの存在を知らない社員もいます。当社では他にも本社のオフィスワーク関連業務を担当している社員6名がテレワークで勤務しています。
今回、テレワークでの障がい者雇用にトライしてみて良かったことはたくさんありました。静野さんが第一号の障がい者雇用だったこと。それに、これまでは個々に貸与していたスマートフォンにドライバー自身がその日の業務件数を入力していたのですが、どうしても業務の負担となっていたところを静野さんに任せることでドライバーの業務が軽減されるようになりました。他にも事務関連の入力作業も静野さんに担当してもらうことで担当者の業務負担の軽減にもつながりました。
社員との間で実行計画を立て、6ヶ月ごとに検証をして改善につなげる取り組みをしています。今回テレワークでも実施できるように効率化を図るきっかけにもなりました。
静野さんの入社をきっかけに、人としては何も変わらないと改めて感じました。障がいの特性は個々にある個性として捉えられるようになりました。忘れっぽかったり、癖と同じように感じれば良いのではないか。
静野さんと話をしていても障がい者という意識ではなくテレワークで働く静野さんという感じ
今後も必要な人材を募集した際、その業務にマッチする方であれば健常者、障がい者に関わらず採用したいと考えています。
課題と感じているのは仕事の切り出しがまだまだ限定的なので、静野さんの活躍できる仕事の切り出しを進めている最中です。採用するこちら側の能力を試されていると感じる時もあります。その人の能力を活かす仕事を準備することが求められているのではないかと。
同社の障がい者雇用では、これまで実現ができなかった障がい者雇用をテレワークを通して実践したことで多くの気づきと新たな可能性の発見につながった取り組みだったように感じました。
実は、障がい者雇用に取り組んだ結果として、従来の仕事の見直しや新たな人材の活用方法など、その組織の成長につながったという事例は同社に限らずたくさんの企業が経験しています。
今回物流サービスでは障がいのある人材の活用という新しい一歩を踏み出しました。今後、この一歩がどのような道へとつながっていくのか、企業としての成長が楽しみになりました。
ご協力ありがとうございました。