人事担当者のみなさん。障害者雇用を“義務感”だけで進めていませんか?

人事担当者の皆さんに質問です。「自社の障害者雇用を“義務感”だけで進めていませんか。」と聞かれた時に、どのような答えを準備されているでしょうか。

本心を言ってしまえば、「はい、その通りです。」と胸を張って答えたいところですが、なかなか正直になれないのが実情だと思います。

企業は社会の公器として「法律を守る」という考え方から障害者雇用に取り組むのは良いことですし、ほとんど企業がそのように考えていると思います。

その場合、義務感”からくるイメージが先行しがちとなり、人事担当者はもちろん、採用された障がい者と一緒に働くことになる従業員にとっても『障害者雇用は「押し付け」「無理矢理」』といった感覚を抱いてしまいます。

障害者雇用の定着が進んでいない企業の担当者は、日々頭を悩ませています。企業や携わる人事にとって障害者雇用とは、「ネガティブ」で「関わりたくない存在」ではないでしょうか。そのようなイメージでは、とうてい従業員からの協力などは得られにくく、嫌々な気持ちで進めてもしんどい点だけが目立ってしまいます。

障がい者の雇用定着を実現させ法定雇用率を守るためには、一緒に働く従業員の“理解”と“協力”が必要不可欠だということは担当者の方々も十分理解しています。しかし、日常の多くの業務に時間を取られる中、本来必要となる「障害者雇用を企業内に浸透させるための働き」にまで手が届いていないのが現状です。

障がい者の雇用は法律による義務だが・・・

法律の遵守といった義務という強い考え方が、実は障がい者の雇用定着の邪魔をしていると感じています。

今の障害者雇用は一昔前のように、求人を出して集まった障がいを持つ求職者(特に身体障がい者)を採用し、雑用に近い業務を与えておけばいいという時代は終わりました。

現在、障がい者の雇用を上手く企業内に定着させている企業の多くは、新しい障害者雇用の枠組み作りに取り組んでいます。有効打に力を注がずに、「義務なのだから取り組みをしないといけない。」といった考えで従来の方法と変わらない障がい者の求人をしているのであれば、成果につなげることは非常に難しいでしょう。

10年以上前から感じていたことがあります。それは、障害者雇用における情報量の圧倒的な少なさです。人事担当者にとって、障がい者の雇用定着を実現するためのテキストや手本となるような情報というものがとても少ないのが現状です。これは、私が障がい者の雇用に携わるようになった10年以上前からほとんど変わっていないように感じています。

例えば、「就労移行支援事業所」と言われる障がい者の就労を後押しする福祉機関の存在を知らない企業が今でも多くあります。地域によって事業所の数にバラつきはありますが、就労移行支援事業所」はこれからの障害者雇用には不可欠な存在であり、専門的な立場から企業に不足している部分をしっかりサポートしてもらえます。

また、障がい者の採用や雇用定着に活用できる助成金があるのを知らない担当者も多いと感じます。障がい者の雇用で活用できる助成金には2種類あり、ひとつは新規の採用時に活用できるもので、申請や問い合わせは管轄の労働局となります。もうひとつは高齢・障がい・求職者雇用支援機構といわれる独立行政法人から支給されるもので、こちらは企業内の設備(障がい者用トイレ、スロープ)や専門人材の配置などの費用を一部助成してくれるものとなります。

障害者雇用をメリットにするかどうかは企業次第

ここで人事担当者の方に申し上げたいことがあります。言葉を選ばずに言いますと、障害者雇用を企業のメリットにすることを考えてみてください。

「障がい者を企業の利益のために利用しているようで抵抗がある。」という感覚を持つと思いますが、そうではありません。私がお伝えしたいことは「障がい者の本格的な雇用をきっかけに、企業の成長となる取り組みに繋げる。」という意味のメリットです。具体的には、以下の様なものです。

① 人材不足の解消

身体に障がいを持つ人材以外の障がい者をいち戦力として有効活用ができれば法定雇用率の上昇などの法改正に一喜一憂しなくて済みますし、結果として雇用未達成による納付金(罰金)の支払いもしなくて済みます。

また、障がい者の雇用をきっかけにテレワークのような新しい働き方を本格導入する企業も増えています。これは、子育てや看護・介護の家族を持つ従業員へと拡張していくことができます。

② ダイバーシティ取組みに具体化

多くの企業のHPでは「ダイバーシティ」を合言葉に企業の考えや精神を色々な形表現されているのですが、具体的な取り組みを発表している企業はまだまだ少ないと感じています。障がい者という多様性は一部にすぎませんが、健常者(マジョリティ)としての生活の中で病気や事故により、自分が障がい者(マイノリティ)になるということは珍しい話ではありません。障害者雇用を通じて多様な人材の活用を具体的な取り組みとして企業内で作り上げて欲しいと思います。

③ 従業員の成長

企業が障がい者の雇用を本格的に取り組むと決め、従業員への理解と協力を求めることができれば、自分たちで障がい者との共存を考えるようになります。

「仕事を進める上でどのようなサポートをすればよいのか」「障がい者が働きやすい職場づくりを目指す」「障がい者の強みを活かした業務の改善」など。

障がい者の特徴や癖を理解することができると、次には障がい者の有無に関わらず人の個性を理解することができるようになります。

障害者雇用をきっかけとして企業の成長に繋げるためにも、“義務”にプラスアルファを付けてもらえればと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム