メンタルヘルス対策の導入が障がい者雇用に与える影響と3つのメリット[1/2]

今年の夏は、4年に一度の祭典であるサッカーワールドカップが開催され、プロのアスリートたちによる素晴らしいプレイで私たちを魅了してくれました。

開催国であるロシアという国のイメージは「寒い場所」という印象を持っていましたが、試合会場のある地域では気温40℃になるところもあり、厳しい環境の中で激しい試合が繰り広げられました。各国を代表した選手たちには大きな期待が掛けられ、時にはそれがプレッシャーになりプレイにも反映されたと思いますが、どの選手を見ていても「強い精神力」を持っているなぁと感心させられました。大きなプレッシャーの中で保つ精神力というのは、おそらく普段からの厳しい練習はもちろん、最新のメンタルトレーニングによる物事の捉え方や考え方の習得も大きく影響しているのだろうと考えます。
一般的な「心のつくり」というのはガラス細工のようにとても繊細です。プロのアスリートのような「強い精神力」を持つ人たちというのは、現在であればプロのトレーナーから科学的な見解をもとにしたメンタルトレーニングを受けていますのであらゆる場面でも同じだけのパフォーマンスと結果を残すことができるのです。

メンタルヘルス対策が企業にもたらす影響

正しい知識と理解の上にあるメンタルヘルス対策が企業にもたらす影響というのは非常に多くのメリットを生み出してくれると考えています。

従業員の健康維持というのは、それだけで企業の利益となります。それら多くのメリットのひとつとして、障がい者雇用の取り組みにも大きな影響を与えてくれます。(最近、企業の担当者からのご相談を聞く際に障がい者の求人方法や助成金のほかに、メンタルヘルス関連の内容が増えてきています)メンタルヘルス対策により、職場の環境整備や心身の健康維持に取り組んだ結果としてメンタル不調を訴える従業員の数を減らすことができます。

その一方でメンタル不調者を完全にゼロにすることは非常に困難な道のりだとも言えます。このことは人事担当者の皆さんはとても強く感じていらっしゃるのではないでしょうか。会社での出来事だけがメンタル不調の原因ではなく、プライベートなどの日常生活も大きく作用します。

メンタルヘルス対策が企業に与える影響、特に障がい者雇用に与える影響というのはどういったことなのでしょうか。

メンタルヘルス対策に関する法律

2015年の改正労働安全衛生法により「ストレスチェックの義務化」が周知された結果、ペナルティや罰金などの制度がなくても従業員が50名以上の事業所に導入されていきました。

それから、約3年が過ぎようとした現在、企業にとってどの程度の成果が出ているのでしょうか。人事担当者や企業内医療関係者に皆さんは良くご存知だと思いますが、本来のメンタルヘルス対策の考えではストレスチェックの導入だけでは不十分です。

企業は「メンタルヘルス対策」を義務感だけでとらえず、従業員の健康促進にどのような影響があり、その一環としてストレスチェックを実施するわけを周知させることが非常に大事な点となってきます。

メンタルヘルス対策の最大の目的は「予防」

ご存知の通りメンタルヘルス対策の第一の考えは「予防」です。

「予防」の中でも特に「セルフケア(自己防衛)」の必要性を説くことが大切です。実は、人がメンタル不調にかかった時というのは、初期であれば自分では気付かないことがほとんどです。大体は、「自分がうつになるわけがない。」と思って生活していますので、多くの場合スルーしてしまいがちです。その結果として重篤な状態(判断の欠如、措置入院、自殺願望など)の一歩手前ぐらいでやっと同僚や家族がいつもと違う状態に異変を感じて医療機関に掛かるといったのが現実です。

もし従業員に「セルフケア」に関する知識があった場合、自分自身での気付きもありますが、軽度な異変(不眠、食欲不振、抑うつ状態など)でも気付くことができる“周囲の目”という存在になれるということです。この役割というのが非常に重要な点です。どのような病気でも発見が早ければ治療も小さく済ませることができます。企業がメンタル不調による休職者を出した際に掛かるコストを1年で見た場合、多くて約1,000万円になるといわれています。

障がいは決して他人事ではない

また、メンタル不調による「心の病」についての正しい知識を従業員に持ってもらうことで、企業が得られるメリットがあります。

それは、間違った思い込みの解消や精神障がいに対する差別的な意識を変えることができるというものです。例えば、メンタル不調の代表的な病気として「うつ」があります。もしかすると、「うつ」と聞くと「心が弱い人」「無理が効かない」「落伍者」といった印象を持ってしまうのではないでしょうか。当然のことですが、心の強さは人によって差がありますので、打たれ弱い方が「うつ」になる確率が低くはないと思います。実は、軽度な「うつ」であれば、誰しもが一度は経験をしています。「失恋」「受験失敗」「身近な人の死」「病気」「事故」など。幸せのひとつとなる結婚による「マリッジブルー」の状態というのも医療機関によっては軽度な「うつ」と診断されることもありますので、メンタル不調というのは決まった人が発症する病気ではなく、誰もが発症する可能性の高い病気なのだと認識してください。このことは精神障がいに限った話ではなく、身体障がいでも言える事なのです。

身体障がいは年齢を重ねるごとに手帳を取得する確率が増していきます。これは、病気や事故の後遺症により障がい者の認定を受ける中途取得者が多いことが理由です。

このような知識を身に着ける環境を会社が準備することで、様々な取り組みの邪魔となる間違った思い込みを排除することができます。

メンタルヘルス対策に取り組む企業の課題「リワーク(復職)」

また、メンタルヘルス対策で「予防」の次に重要なのが「リワーク(復職)」になります。

現在、メンタル不調により休職した従業員を「リワーク」させるための後押しをするのも企業の責任となっています。その際、受け入れ先となる部署の従業員の意識が非常に大事なポイントになります。一般的に、「うつ」「統合失調症」などのメンタル不調を起こした従業員を見ていると、徐々に体調を崩していき、仕事上のことで周囲に迷惑を掛けてしまいがちですので、職場での「心の病」に対するイメージというのは決して良いものとはいえません。そのことが、障がい者雇用による精神障がい者の雇い入れが進まない理由のひとつです。

上記前項で示したようなメンタル不調や障がい者に対する正しい知識の習得が企業内で進むことで、「リワーク」への協力や精神障がい者・発達障がい者を対象とした「障がい者求人」による法定雇用率対策もスムーズになっていきます。

今回お話しした内容には、ベースとなる知識を従業員が習得するということが非常に重要になってきます。学校では習うことがない社会で得る知識として、企業が設ける役割なのでしょう。

次回は障がい者雇用に与える3つのメリットについてお話しします。

メンタルヘルス対策の導入が障がい者雇用に与える影響と3つのメリット[2/2]

2018.10.04

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント]
雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。

▼アドバイス実施先(一部抜粋)
・opzt株式会社・川崎重工業株式会社・株式会社神戸製鋼所・沢井製薬株式会社・株式会社セイデン・日本開発株式会社・日本電産株式会社・株式会社ティーエルエス・パナソニック株式会社・大阪富士工業株式会社・株式会社船井総合研究所・株式会社リビングプラットフォーム