支援施設インタビュー:ワークネットきょうと

今回、インタビューにご協力いただきましたのは、医療法人栄仁会が運営している就労移行支援事業所「ワークネットきょうと」様です。

こちらの事業所は、主に精神障害者のサポートをメインに就労支援を行っています。また、母体である医療機関としての専門性を強みとし、これから増加する企業での精神障害者の雇用定着を後押ししています。インタビューにお答えいただきましたのは、サービス管理責任者をご担当されています金森様です。

1.読者向けに施設の紹介をお願いします。

医療法人栄仁会宇治おうばく病院を母体とした就労移行支援事業所です。ワークネットきょうとは、一般就労を希望する精神障がいの方を対象として、就労準備から就労定着までトータルにサポートすることを目的とした事業所です。ワークネットきょうとでは、就労に向けた、「基礎訓練」・「職場体験実習(インターンシップ)」・「就職活動」・「就職後のフォローアップ支援」等を行っています。
京都府宇治市(利用定員14名)で運営をしており、利用者は、平均年齢が30代前半で、時期により変動はありますが現在は男性の方が多く、障害者手帳は2級〜3級をお持ちの方が多いです。精神障がいの方は後天的な障害であるために、ご病気を発症前あるいは、発症後にも職業経験のある方が多く、学歴や職歴も様々です。多くの方がこれまでの病気や人生の体験を通したうえで、改めて社会の中で働くことで、自分自身のリカバリーや他者の役に立ちたい、あるいは社会参加されたいと考えておられ、真面目で素直で、何事にも一生懸命取り組む方が多いです。

2.施設で提供している支援の内容とその流れを教えてください。

提供している職業訓練のメニューとしては、軽作業や清掃作業を中心とした「基礎訓練」、動機づけやストレスマネジメント、社会人としてのマナーや面接対策等のグループワークを中心とした「講座」、約40社と提携して行っている「職場体験実習(インターンシップ)」を行っています。基本的には利用者の希望に沿いますが、就職までに平均3社程度の実習を実施しています。
また、個人の目的に応じたパソコン講座等もスポットで必要に応じて行っています。基本的にはスタッフの担当制となっており、1週間〜2週間に1回の面談を通して、就職までの進捗状況や、訓練全体を通して、職業の適性や障害者雇用で働く際に必要な配慮事項等をご本人と明確にしていきます。そのうえで職場開拓をスタッフが中心に企業開拓をハローワークと連携して行い、雇用前の実習でマッチングをはかったうえで企業側と本人側の双方の合意のうえで就職に至ります。
その後は、6ヶ月間はジョブコーチによる職場定着への集中支援を行い、7ヶ月目以降は就労定着支援事業を適応し、継続的に企業と本人の双方へのニーズに応じた支援を行っていきます。

3.支援に関して、今後力を入れていきたいことはありますか?

ワークネットきょうとでは2つの点に力を入れていきたいと考えています。
一つは、母体が医療機関であり、就労以外の生活面や医療面に関しても解決できるスキルやツールを持っていることが強みです。働くスタッフも就労支援のスキルだけでなく、医療機関で精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士としての経験もあり、就職後の支援の中で障害者雇用を企業だけで支えきれない生活面や医療との連携で支えながら、定着に関する課題解決に取り組みたいと思っています。
もう一つは、利用されている方の一般就労や、就職後の定着支援は、一定の成果は上がっています。しかし、本人の希望に沿った雇用形態や業種、職種に沿った働き方がどこまでできているのかという点において、はっきりとした指標はないですが、不十分な点があります。その部分を解決するためにも効果的な支援の在り方や、京都府内で利用者が選択できる職域の幅を広げることができるような活動を日々の支援の中で行いたいと思っています。

4.現在の障害者の就労・就職全般に感じる問題点・困っている事はありますか?

ワークネットきょうとでは、利用者の希望に沿って、支援員が企業開拓を行っています。その中で最近、企業の担当者の方から精神障害者の方の障害者雇用を積極的に行ったが、うまく定着できなかった経験から、現状、雇用に対して躊躇されている企業の方の話をよく聞きます。精神障害者は「休みがちになる」「波がある」等の全ての人ではなく、ある一部分だけを強く、悪いイメージで認識されがちな状況があります。
確かに、精神障害者の方は仕事の中だけでなく、生活面や他者との対人関係、また、環境の変化も含めて、病状の波や悪化による休職や退職のリスクはありますが、個々の就労継続に関する課題点を共有し、支援者側と企業側で就労定着に関する棲み分けを行い、連携を取ることで必要なタイミングでの支援をはかり、一定の時間をかけて環境に慣れることができれば、解決することは可能です。
そのことを経験を通して広めていくことが個々の事業所の役割として問題点の解決につながるのではないかと思っています。

5.障害者の受け入れに悩んでいる企業へのエールをお願いします。

障害者雇用を行ううえで重要なこととして、業務や障害の特性を理解したうえで丁寧にマッチングをはかることは非常に重要です。
そのためにも就労支援や定着支援の経験が豊富な就労移行支援事業所等の就労系の支援機関と連携したり、雇用前実習といった形で雇用前に丁寧にマッチング(関わる事業所が本当に就労後も求められる協力をしてくれるのかも含めて)することで、ミスマッチを防ぎ、継続や安定した雇用はできると思います。しかし、継続して働くためにはそれだけではなく、キャリアパスやナチュラルサポート、戦力となる働き方などの職場の中で現場スタッフもご本人も負担にならない環境づくりは大切です。そのためにはこれまでに就労関連のノウハウを持っている事業所に相談をしていただくことが近道だと思います。もし、ご希望頂ければ、ワークネットきょうとにご相談していただければご協力させていただきますのでよろしくお願いいたします。

6.就職準備中・求職活動中の障害も持った方へのエールをお願いします。

社会の中で障害者雇用に関する認識や制度はこの数年で大きく変わっています。今後も大きく変わっていくことが予想されますし障害を開示して働くにあたって、相談をする場所、受け入れる企業も大きく変わってきています。働く以上は当然、企業にとって戦力になる働き方は必要ですが、自分に合った職場で自分のスキルや長所を生かして働くことは十分に可能です。
長く働くためには、相談できる人や場所をたくさん持つことと、自分自身のワークライフバランスやセルフケアもできるとよりよいと思います。一人一人で状況は違います、長期的な視点で自分に合った職場を探してください。
また、ワークネットきょうとでご協力できることもあると思います。その際にはぜひ、相談に乗れると嬉しいです。

インタビューにご協力いただきありがとうございました。

施設情報
施設名:ワークネットきょうと
代表者名:金森 翔
設立日:2010年4月1日
業種:障害福祉サービス
所在地:京都府宇治市五ヶ庄新開11-23
ホームページ:http://www.eijinkai.or.jp/group/welfare/worknet.html
事業内容:就労移行支援・就労定着支援・自立訓練(生活訓練)の多機能型事業

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント] 雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。 ▼アドバイス実施先(一部抜粋) ・opzt株式会社 ・川崎重工業株式会社 ・株式会社神戸製鋼所 ・沢井製薬株式会社 ・株式会社セイデン ・日本開発株式会社 ・日本電産株式会社 ・株式会社ティーエルエス ・パナソニック株式会社 ・大阪富士工業株式会社 ・株式会社船井総合研究所 ・株式会社リビングプラットフォーム