前回のコラムでは、「面接選考」について書いてみました。いかがだったでしょうか?
コラムを書いたあと、私の職場では新年度スタッフの体制整備に向けた採用面接(障がいのある人ではなく一般の求人ですが…)を行なったのですが、自分自身で面接を振り返ってみると、コラムで偉そうに書いているわりには面接前の事前準備や面接時の話し方などまだまだできていないことが多いと反省していたところです…。
障害者雇用であれ、一般の求人応募や新卒採用であれ、面接官は面接テクニックの向上に努めないといけないですね
インターンシップの活用
さて、今回のコラムは前回の続きである「採用の質」。今回は「インターンシップの活用」を話題にしたいと思います。
大学生の就職活動は、新聞やTVなどで話題になっているとおり、この3月から解禁になっています。
大学生たちは、自己分析や業界研究、企業研究等をもとに説明会への参加や企業エントリーを活発に取り組んでいるようで、先日も移動時の電車の中で大学生が就職活動の進捗を報告し合っており、大学生も大変そうだなーと感じたところです。
電車にいた大学生も言っていましたが(地獄耳でこっそり聞いていただけですが…)、インターンシップをうまく活用しているようでした。1dayなのか、数日なのかはわかりませんでしたが、インターンシップで会社の状況を把握したり、実際の職場を見る中で企業や業界に興味を持つことができているようでした。
私の所属する社会福祉法人北摂杉の子会でも、福祉・心理等で勉強をした大学生のインターンシップをできるだけ多く受け入れるようにしています。
私の部署でもこの春に10人弱の大学生がインターンシップに来てくれ、最終日には大学生と私で必ず振り返りの面談をしています。
面談の時にいつも感じることですが、大学生によって私たちのような福祉の仕事に対するイメージや解釈の仕方には違いがあり、興味関心の視点も十人十色です。大学生ならではの視点や価値観は、私たちにとっても学ぶことが多く、管理者や面接官という立場で考えると「どんな人材がほしいか」「どんな人材と働きたいか」「中長期の視点でどんな人材を育てたいか」などを改めて考えるよい機会にもなっています。
障がいのある人においても大学生と同じようにインターンシップの活用は効果的です。
障がいのある人は、障がいのない人に比べて経験したことが少ない傾向にあるため、インターンシップはご本人にとって実際の職場の雰囲気や業務内容、自分のスキルや体力などを確かめるよい機会となっており、就職へのイメージを具体化することができているようです。
イメージ共有によるミスマッチの防止
私の職場であるジョブジョイントおおさかでも障がいのある人への職業訓練としてインターンシップの機会を提供しており、1人あたり3〜5社の企業へインターンシップに行ってもらっています。
以下は、インターンシップに参加したご本人の声です。(代表的なもの)
- 具体的な業務内容を知ることができた
- 業務のレベルや難しさ、自分にできそうかを知ることができた
- 社内(部署)の職場環境や雰囲気を知ることができた
- どんな人と働くのかを知ることができた
- 通勤時間や労働時間に対する疲労度を知ることができた
- 自分に合っているか、働き続けていけそうかをイメージすることができた
このようにインターンシップでの経験では、具体的なことをたくさん知ることができているようで、本人たちとすれば少しでもそんな経験があった方が志望動機や就労意欲が明確になり、面接でも自分の思いを伝えやすくなっているように思います。
今回のテーマである「採用の質」という視点で考えると、障害者雇用がうまくいっていない企業の多くは、企業と障がいのある人のミスマッチが大きな要因であると思います。
ミスマッチを防ぐのはなかなか難しいですが、企業と障がいのある人の双方が「イメージを具体化する」「不確かなことをできるだけ確かなものにする」ということでミスマッチはある程度防ぐことができます。
「面接」においては、前回のコラムのとおり事前の準備で視覚的なツール等を用意し、面接場面でできる限りのイメージの具体化を図ります。
もちろん、面接でやりとりする中でお互いのイメージのズレを確認し合うこともよいかと思います。
ただ、面接では、実際の職場に身を置いていないためイメージがいまいち具体化できていないこともあります。そのためインターンシップでは、実際の職場で働いてもらい、業務を通じてコミュニケーションを取る、集中力や業務スキル・昼休みや休憩の過ごし方の様子を見る、どんな障がいの特性があってどんな配慮事項が必要かなど、様々な場面で観察して自社の採用したい人物像と合っているかを確かめることが可能です。
会社の成長に繋がる価値ある障害者雇用を
今回の「採用の質」は、企業と障がいのある人の最適な組み合わせにこだわるということです。
採用するからには、戦力として働いてもらったほうが望ましく、ただ単に雇い入れして雑務を担ってもらうような障害者雇用では効果もなく、成功とは言えません。
どうせ障害者雇用をするなら、価値ある障害者雇用をして会社の成長につなげる。
そこにこだわるなら、出会いと決断の瞬間である「採用の質」にこだわってみてはどうでしょうか?
そんな障害者雇用がたくさん生まれることを願って、私も日々の仕事に邁進したいと思います。