今、日本は外国人観光客数が年々増加しており、2018年はその数が3,000万人を突破しました。
私の住んでいる大阪では街を歩いていたり電車に乗っている時など、海外からの観光客だと思われる人たちとたくさん出会いますし、公共施設などの掲示物やアナウンスなども海外の言語で表現されている数も多くなったと感じます。毎日どれだけの人がこの日本に来ているのだろうと考えてしまいますが、実はこの数字はまだまだ伸びると言われています。
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には海外からの観光客が4,000万人に増えると見込まれています。
東京への出張時にいつも感じるのが「本当に人が多いなぁ。これ以上人が増えた時や災害発生時は大丈夫なんだろうか?」と。朝の通勤ラッシュの時間なんて、東京で暮らしたことのない私からすると異常なぐらいの人が移動しているというのが分かります。一度、朝の通勤ラッシュの時間帯に地下鉄に乗ったのですが、わずか3駅の移動にもかかわらずあまりの人の多さに気分が悪くなってしまった経験がありましたので、あれを毎朝経験している方々のメンタルの強さには大変驚きました。資源の乏しい日本としては、ますます観光産業を活性化させていくと考えられます。
現在、政府や厚生労働省では東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、いくつかの対策を講じているのですが、そのひとつとして「テレワーク」の推進があります。おそらく、企業の人事担当者であればよく知っているワードだと思います。
「テレワーク」とは
テレワークとは、
ICT(Information and Communication Technology = 情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を指します。
テレワークには大きく3つの形態があります。
- 在宅勤務
自宅を就業場所とし、職場とはPCやインターネット、電話で連絡を取り合います。
- モバイルワーク
働き場所に依存せず、顧客先や移動中などに、PCや携帯電話を使用した働き方。
- サテライトオフィス勤務
サテライトオフィス、テレワークセンター、スポットオフィス等の施設を利用し、就業場所とするもの。
「テレワーク」という働き方は障がい者にとって非常に有効的なスタイルだと考えます。
障がいのある人には健常者にしてみれば当たり前のようなことが困難であったりストレスとなってしまうことが少なくありません。特に「通勤」というのは障がいがなくてもストレス値が高く場所やシチュエーションによっては危険な状態にもなります。そのような状態を放置しておくというのは企業にとってもデメリットではないでしょうか。また、「テレワーク」は障がい者だけではなく様々な立場・状態を抱える従業員にとっても邪魔な存在ではなく有益な結果をもたらします。新卒の求人の際にも「テレワーク制度あり」の文言があるとエントリー数にも影響が出ると思います。
人事担当者の方にとっても良い制度ではないでしょうか。
在宅就業障害者特例調整金/報奨金
「テレワーク」に関連した助成金制度があるのをご存知でしょうか。
それは、法律のひとつである「障害者雇用納付金制度」の中にある『在宅就業障がい者特例調整金・報奨金』と呼ばれるもので、雇用されていない障がい者で在宅もしくは就労訓練の状態(例えば、就労移行支援事業所などに通所している)である障がい者に仕事を依頼し、一定額の対価を支払った企業に受給資格があるという助成金制度です。
説明
この制度は、在宅就業障がい者(自宅等において就業する障がい者)に仕事を発注する企業に対して、障害者雇用納付金制度において、特例調整金・特例報奨金を支給する制度です。在宅就業支援団体(厚生労働大臣に申請し、登録を受けている団体のこと。就労系福祉事業所が多い。)を介して在宅就業障がい者に仕事を発注する場合にも、制度の対象となります。発注する際の仕事には特に取り決めはなく、データ入力やHP制作など、様々な仕事に対応しています。年間の発注額が35万円以上(以前までは105万円以上)であれば、こちらの制度の対象となります。
このふたつの助成金制度の違いは“企業の従業員数”となり、『在宅就業障がい者特例調整金』は常用雇用労働者101名以上の企業が対象。もうひとつの『在宅就業障がい者特例報奨金』は納付金制度の対象ではない常用雇用労働者100名以下の企業が受給できる給付金です。
詳細
名 称:『在宅就業障がい者特例調整金』『在宅就業障がい者特例報奨金』
管 轄:各地域の独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構
内 容:障がい者であり、「一般企業に雇用されていないが働く能力のある在宅の人材」「就労系福祉事業所に通所している利用者」に対して就業の機会を促進するための制度。IT技術の発達と高速通信網の整備により、会社だけでなく自宅やその他の場所でも成果の伴った業務を行うことができるようになり、通勤困難な障がい者の方にも在宅での就業が可能になりました。
今回ご紹介の『在宅就業障がい者特例調整金』および『在宅就業障がい者特例報奨金』を活用すべき企業としては、
- 障害者雇用促進を図りたい企業
法定雇用率を課せられている企業が障害者の理解を進めたい際に活用する「企業実習」と同じく、障害者の能力を知るいい機会として考えられます。
- 障害者雇用義務のない中小企業
障害者の雇用義務のない従業員数45.5人未満の企業が障害者の社会参加の協力という意味合いで活用する事をお勧めします。
- 期間限定の繁忙期を抱える企業
該当する仕事として「納期を求められる」「制作物」のような業務になりますので、一時的な繁忙期のある企業には向いている制度だと思います。
などが考えられます。
注意点として、受給資格のある企業でも納付金の支払い対象(罰金を納めている企業)は対象外になる可能性もありますので、活用の際には念のため管轄の「独立行政法人 高齢・障がい・求職者雇用支援機構」にご確認ください。
感想
今後、当たり前な働き方のひとつとして導入が進むことになる「テレワーク」と「障害者雇用促進」を上手く掛け合わせた制度であり、企業にとっても多額ではないもののメリットを感じられると思います。但し、制度自体の認識が低くあまり知られていないのが現状ではないでしょうか。
「在宅就業支援団体」の制度ができてから約10年で登録数は全国で20数団体(厚生労働省2019年2月現在)しかありません。おそらく、個人で企業から仕事を請け負い、製品を納品することができる障がい者の数は、圧倒的に少ないと考えます。そんな時に企業と障がい者の間に立てる「在宅就業支援団体」が今よりも多く存在してもらいたいと思います。
厚生労働省様へ。今後、「テレワーク」の普及に伴い、障がい者の雇用される数も増加するはずです。企業への周知を図るのと同様に「在宅就業支援団体」の登録増加への働き掛けもよろしくお願いします。