我々の日常生活に突然降りかかってくる病気や事故といったリスク。普段から予防をしていても、すべてのリスクを回避するというのは非常に難しいことです。万が一のことを考えて「保険」という商品を活用して、リスクを回避しようとしている人や企業は少なくないと思います。
では、障がいのある人たちの「保険」はどのようになっているのでしょうか。実は、少し前まで、健常者が当たり前のように利用できる「保険」に、すべての障がい者が加入するということができませんでした。現在、徐々に障がいのある人たちやそのご家族が契約・加入することができる「保険」が出てきています。今回は障がい者に特化した「保険」を生み出した『ぜんち共済株式会社』と同社が取り組んでいる「障害者雇用」について取材してきましたのでご紹介したいと思います。
今回、取材にご協力いただきましたのは同社取締役 営業統轄部長の亀田秀明様です。
取材日は、新しく移転されたオフィスにお邪魔しました。
当日、新オフィスの玄関に設置されたウェルカムボードで出迎えていただきました。こういったお心遣いは嬉しいです。ありがとうございます。
『ぜんち共済株式会社』は、2000年7月に全国の知的障がい者とその関係者の方を対象として福利厚生制度を行うために設立された「全国知的障害者共済会」を前身として発足し、2006年の保険業法改正に伴って同年現在の『ぜんち共済株式会社』を設立。
2008年に少額短期保険業者として会社を登録し、全国の知的障がい者・発達障がい者、てんかんのある人とそのご家族を対象に現在では保有契約数が45,000件を突破。
同社が取り扱う保険商品は「ぜんちのあんしん保険」「ぜんちのこども傷害保険」の2つ。
◎「ぜんちのあんしん保険」
- 加入の際、健康診断や医師の診断の必要なし。
- 「病気やケガによる入院・通院費」「死亡保障」「他人へのケガや他人の財物を壊した時の個人賠償責任」「トラブル時の弁護士費用」などに対応した保険。
◎「ぜんちのこども傷害保険」
- 加入の際、健康診断や医師の診断の必要なし。
- 「学校内外問わず不慮のケガによる入院・通院費」「他人へのケガや他人の財物を壊した時の個人賠償責任」「トラブル時の弁護士費用」などに対応した保険。
詳細は同社HPにてご確認ください。
https://www.z-kyosai.com/
こちらの『ぜんち共済株式会社』では、設立当初から障がい者の雇用をひとつの目標として準備してきました。それは、障がい者を対象にした「保険」商品を取り扱っているという理由だけではなく、代表である榎本重秋氏の強い想いからスタートしたということです。
障害者雇用のスタート
同社にて障がい者の雇用に向けて導入したのは「企業内実習(体験実習)」でした。
障害者雇用を上手く実践している企業の多くが「企業内実習」を取り入れます。障害者雇用には「障がい者理解」「受入れ準備」が必要になってくるのですが、「企業内実習は」その両方を満たしてくれます。亀田取締役のお話では、お付き合いのある就労系福祉事業所や支援学校、東京しごと財団から定期的に実習生を受け入れながら、従業員の理解と受入れ環境整備を進めることで障がい者の職場定着を目指した雇用準備を進めることができたということです。
そして2017年、次の段階として採用を前提にした実習を開始。
そのときに実習生として同社に紹介されたAさん(男性30代・知的障がい者)は、2週間の実習期間を経て無事パート社員として雇用されることになりました。
入社されたAさんの気持ち
ここで、入社されたAさんについて現在のお仕事のことも含めてお話を聞かせていただきました。
Aさんが同社に入社されたのは2017年2月。入社以前の職歴は、人とお話をするのが大好きな性格を活かして、大手アパレル会社にて接客業に従事。それまでは自分が障がい者だということを自覚せずに企業で働いていました。障がい者手帳を取得したきっかけは、働いた経験はあるものの定職に就くことはなく、また日常生活で上手くいかないと感じることも多くなっていた時期でした。そろそろ年齢的なことも考え、安定した就職をするためにも、障がい者手帳を取得することを決めました。
ご縁があり同社で働き始めた頃は緊張の連続だったようですが、働きやすい職場環境と周囲からのサポートのお陰で仕事もプライベートも充実した生活を送っているということでした。今の仕事は、保険の申込書類のスキャニング(データ保存)、データ入力、宛名ラベル貼りといった業務になります。また、Aさんの将来の夢についても聞かせていただきましたが、自立して結婚をしたいということでした。
従業員の方々の気持ち
次に、取締役亀田氏に障害者雇用に対する従業員の方々の気持ちについて聞かせていただきました。
「企業内実習」の開始から、受入れの担当部門には少なからず負担や不安があったようなのですが、実習を繰り返すことで障がい者への理解が深まることと、実際の業務として助かっていると感じられる部分が多かったために徐々に職場が受け入れてくれていると実感されたのだそうです。
現在、従業員の方々のAさんとの接し方を見ていると、障がいの有無に関係なくひとりの人として関わっているように見えているということです。おそらく、そういった職場の雰囲気がAさんにも伝わっているからこそ「働きやすい職場環境」だという言葉が出てきたのではないでしょうか。
こちらの新しいオフィスは部署やグループを分ける壁や間仕切りがない執務スペースとなっており、その奥には休憩時や就業後のコミュニケーションの場としても活用できるフリースペースがあり、非常に従業員のことを思いやる気持ちが伝わってくる職場だと感じました。
最後に、『ぜんち共済株式会社』の経営理念
「すべての出逢いを尊び 心を尽くし 誰にも優しい社会を創造します」
この理念のもと、障がいのある人たちこそ保険による保障が必要なのではないかという想いで会社を設立された代表の榎本氏と従業員の皆さんの暖かくそして力強い気持ちを感じさせてくれる素晴らしい会社でした。
ご協力ありがとうございました。
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