人任せの会社体質が障害者雇用を目指す組織に与える影響

色々な物事が追いつけないような速度で変化していることを感じます。それは、企業にも求められており、働く現場を見てみると「AI」や「働き方改革」といった言葉をよく耳にするようになりました。

障害者雇用も、新たな考え方で取組まなければ大きな壁にぶつかる

障害者雇用の取り組みを始めたばかりの企業でしばしばみられる特徴があります。それは、一緒に働いている従業員の方たちの『人任せ』な姿勢です。実は、この『人任せ』という姿勢は障害者雇用に限った話ではなく、企業のあらゆるところで見られます。

「私の仕事じゃないから」「担当者は〇〇さんだから関係ない」「めんどくさいなぁ」といった態度の人

会社にひとりやふたりは心当たりのある方がいるのではないでしょうか。協力をお願いする側としては、こういう方がいると本当に心が折れそうになりますよね。

これも企業文化なのだと思いますが、そもそも企業文化とは従業員たちが気付かないうちに作り出していることがあります。例えば、新しく入社した会社には、会社規定とは違った職場で生きていくため(少し大げさですが)の暗黙のルールなどがあります。ちょっとおかしいなぁと思うようなルールであっても、人は時間が経つほどに馴染んでいき、1年も経てばムラなく職場ルールに染まることができます。

「人任せ」な人は、その人の性格も大きく影響するのでしょうが、何かを進めるために協力を求めたい場面でも「人任せ」な姿勢が許される企業にも責任のひとつがあるように感じます。

人任せは、障害者雇用に悪影響を及ぼすことがある

例えば、障害を持つ方たちには職場での配慮や周囲からの協力がそれほど必要でない人たちもいます。その方たちの場合は、周囲も最低限の理解さえあれば、大きく関わりを持たなくても雇用は上手くいきます。

しかし、現在の雇用の現場を見てみると、これから採用する障害者の方たちは、これまでと違い周囲の理解や協力が必要な人材が主流となっています。障害の特性によって限定された業務しかできないということだけではなく、他者とのコミュニケーションや自分の普段の振る舞いに気を配ることができない障害特性を持つ人もいます。そのような方が職場にいると、時には周囲がフラストレーションを抱えたり、衝突することもあります。職場でこういったことが発生した時に、「人任せ」な姿勢で振舞う方がいらっしゃると非常に残念でなりません。

各企業の人事担当者は額に汗して、採用競争の激しい中で、より自社に適した人材を獲得しようと努力を惜しまず活動しています。配属する部署が決まっていれば、職場をイメージしてマッチング作業をしているはずです。そのような努力の結果というのを知らずに、自分の部署に配属された障害者に対して上記のようなことが日常的に見られる職場では障害者雇用が上手くいかない可能性は非常に高いと感じます。

「関係ない」ではなく、協力する姿勢が大切

それでは、なぜ今、障害者雇用には周囲の従業員がこれまで以上に関わりを持つようにしないといけないのでしょうか。

今までの障害者雇用における仕事をイメージしてみますと、下記のようなところではないでしょうか?

・障害者従業員の仕事は単純作業

・任せられる仕事の範囲が限られている

・各部署からかき集めてきて業務を与える

徐々にですが、企業内の障害者雇用に対する位置づけが変わってきました。企業の評価として見られる「法令遵守」や「適正な労働力確保」、「多様化に向けた企業姿勢」などを実現するための課題解消のひとつとして、障害者雇用も捉えられる時代になりました。

「単なる採用」から「雇用定着」を目指す

これからの障害者雇用は、採用した障害者がなるべく長い期間働いてもらうことを目標としています。

そのためには、これまでの障害者にしてもらう仕事としてイメージした障害者の業務 = 単純作業という考え方だけではなく、幅広い業務配分も想定することが必要です。これは、障害者には固定の仕事だけをしてもらえばいいということではなく、障害者本人の特性や特徴に最適な役割業務に就いてもらいましょうというものです。

障害者を採用する場合、単純作業しかできないといった間違った思い込みが先行してしまうと限定された範囲からの採用となってしまい、結果として少ない選択肢となります。そのため本当に業務最適となる採用には辿り着けなくなりますから、雇用の定着にはつながりません。また、単純作業というのは、今後AI化などの観点からいえば、この世から失くなってしまう仕事です。それに合わせていると、障害者の働く場面も会社内から消えてしまいます。

障害者に対する知識や理解を深める活動を進めることで、障害者の業務配分の広がりへの可能性を知ることができます。従業員がこの気持ちにならないと、業務の切出しとしての協力が得られません。職場の問題解消に対しても「人任せ」にはなりにくい環境作りにもつながります。

障害者雇用の現場に「人任せ」な従業員が存在する企業は、対策を考える必要があると思いますので、一度職場をよく見てみてください。

ABOUTこの記事をかいた人

上前 忠司 (日本障害者雇用総合研究所代表)

[障害者雇用コンサルタント] 雇用義務のある企業向けに障害者雇用サポートを提供し、障害者の雇用定着に必要な環境整備・人事向け採用コーディネート・助成金相談、また障害者人材を活かした事業に関するアドバイスを実施。障害者雇用メリットの最大化を提案。その他、船井総研とコラボした勉強会・見学会の開催や助成金講座の講師やコラム執筆など、障害者雇用の普及に精力的に取り組んでいる。 ▼アドバイス実施先(一部抜粋) ・opzt株式会社 ・川崎重工業株式会社 ・株式会社神戸製鋼所 ・沢井製薬株式会社 ・株式会社セイデン ・日本開発株式会社 ・日本電産株式会社 ・株式会社ティーエルエス ・パナソニック株式会社 ・大阪富士工業株式会社 ・株式会社船井総合研究所 ・株式会社リビングプラットフォーム