こんにちは。
新型コロナウイルスの感染対策は、治療薬やワクチンの開発を待つまでもう少し時間がかかるようですね。
コロナとの共存が取り上げられるようになり、「ウィズコロナ」と言われることが多くなりました。
今回は、新しい日常となった「ウィズコロナ」の中で、発達障がいの人の「働く」を考えてみたいと思います。
本人を取り巻く日常の変化
私たちも同じですが、緊急事態宣言が発令されたときは、いつもの日常が大きく変化しました。
仕事も暮らしも急なスピードで一変し、「外出自粛」はだれもが経験したことのないルールで、戸惑うことも多かったように思います。
急な変化変更×未経験
「緊急事態宣言」や「外出自粛」は、急な変化変更でした。
発達障がいの人にとって、「急なこと」はなによりも苦手です。
それに加えて、「未経験なこと」は不安や心配をより一層高めてしまいます。
4月と5月の世の中の急な動きは、発達障がいの人にとっては苦手なことの掛け算がたくさんあり、ストレスある状況であったように思います。
いつもの習慣が保てなかった
自閉症や発達障がいの人は、「習慣(ルーチン)」を大切にします。
大切にするというよりか、習慣化することで混乱を防ぎ、日々の中で「安心感」を得ることができます。
毎日同じ時間に起きたり、同じ電車に乗ったり、同じ時間に出社したり、同じ手順で仕事を進めたり…。
「いつもの日常」がいつも通りであることで安心でき、その結果いつものように仕事に取り組むことができます。
なので、「いつもの習慣」を保てなかった4月や5月は、仕事も生活もリズムを大きく崩してしまった可能性があります。
心配や不安の感じにくさ
発達障がいの特性のひとつに、「想像力の特性」があります。
簡単に言うと「見えないことが想像できない」ということで、人の心を読み取ったり感情のコントロールが難しかったり、変化変更や時間管理がうまくできないなど、形として表現できない「見えないもの」は理解しにくいと言われています。
コロナが広まった以降、不安や心配な気持ちになった人は発達障がいの有無に関係なく、みんなが同じように感じたと思います。
ただ、発達障がいの人は、心配や不安からくる心身への影響を感じにくいことがあり、ストレスが自分の体や心にどんな影響を与えているかを「客観視しにくい」ことが多いものです。
感じにくさは心身への影響を悪化させ、次第に睡眠や食欲などのリズムが崩れたり、意欲ややる気が減ってしまうこともあります。
このように、いつもの日常が変化したことで発達障がいの人を取り巻く状況は様々に変わりました。
障がい特性も影響して、ご本人にとっては感じにくいことも多く、症状が大きく現れたときに初めて気づくことも多いのかもしれません。
周囲の人がこまめに気にかけていくことがポイントのように思います。
職場でできること
さて、発達障がいの人を社員として雇用したり、同僚として一緒に働いている方は、上記のような取り巻く状況があったとしても、「一緒に働く」ことが求められていると思います。
以下は、いくつかのポイントでまとめてみました。
なんでも見える化する
発達障がいの人は「視覚優位」の特性があると言われています。
必ずしも全員がそうとは言い切れず、もちろん個人差はありますが、効果的な伝え方のひとつであることは間違いありません。
「今日の予定」「週や月の予定」「仕事の手順」「ルールの提示」など、見える化は伝えたいことを視覚的に表現するということです。
本人が正しく理解していないことがあったり、覚えていないことがあったとしても、「見える化されたもの」を指差して再度見てもらうことで理解は早まると思います。
*以前のコラム「わかりやすく教える技術」でもご紹介しています。
コロナの影響もあって、本人の気持ちの中に不安や心配なことなど気になることは多いように思います。
不安や心配な気持ちは、頭の中がぐるぐるしている感じで、口頭での指示をきちんと聞けていないことは多いものです。
でも、視覚的にまとまったものを提示すれば、自分のペースで理解でき、視覚的な理解がインプットの質を後押しします。
少々面倒なこともあるかもしれませんが、「伝えたいことはなんでも見える化する」ってことをお勧めしたいと思います。
習慣化と定点観測
前述のとおり、コロナでいつも通りが保てなくなり、リズムを崩した発達障がいの人は多かったように思います。
リズムを元に戻し、体調の回復や仕事のパフォーマンスを元どおりにするには、「新しい習慣」に慣れてもらうことが早いと思います。
厚生労働省が示した「新しい生活様式」。
このスタイルを取り入れる中で職場のルールが変わるなら、それに慣れてもらうことが必要です。
私の職場では、毎朝の検温、1時間に1回の換気、午前・昼・午後の定期消毒など、新しい日常が新しい習慣になりました。
訓練する発達障がいの人も働くスタッフたちも、すっかり慣れてきたように思います。
また、心配や不安な気持ちを抱えて出社する発達障がいの人がいれば、職場で気にかける必要がありますが、良し悪しを判断するのはなかなか難しいものです。
定点観測というのは、毎朝の検温と同じようなイメージで、習慣化した予定や業務を定点で観測するということです。
定点なので調子の良し悪しがわかりやすくなるように思いますし、過去との比較もしやすくなります。
習慣化は、「職場がいつも通りであること」を効果的に伝え、安心感を与えることができます。
発達障がいの人が、「職場は安心安全である」と理解できれば、仕事に集中しやすくなるでしょうし、ご本人の様子も明るく前向きになったり、新しいことにチャレンジするようになっていくと思います。
新しい目標を立てる
発達障がいの人と関わる時のポイントのひとつに、「見通し」というキーワードがあります。
前述でも紹介したとおり、想像力の障がい特性が影響して「先のことを想像できない」という特性があります。
変化変更が苦手な理由は、変更があったときに変更後の未来をイメージできないために心配や不安になって苦手なイメージが根付いてしまいます。
また、未経験なことが苦手なのも同じで、経験してないことは未来と同じでありイメージできないために苦手なこととなります。
ただ、職場において「将来的な成長に期待したい」と思って人材育成することはよくあることです。
そのときは、こちらから「未来」をできる範囲で言語化して見える化を図り、「目標」を立てて進むべき道筋を示すと「見通し」を持つことができ、結果的に「安心感」を得ることができます。
コロナにおいて、社会や経済の動きはまだまだ先読みできない状況でもあります。
会社の方針や事業展開が決めづらい状況にもありますが、ご本人の仕事を少しだけでも「見通しを示す」ことができれば、心配や不安の除去につながり、職場では落ち着いて仕事に取り組むことができると思います。
また、職場やご本人の業務に少しでも余力があるなら、新しい目標は「資格やスキルの取得」に当てるなど、将来の成長につながる投資的な意味合いで目標立てすることもよいように思います。
いかがでしたでしょうか。
ウィズコロナの時代は、私たち人間にとって未知の世界になるのかもしれません。
発達障がいの人を取り巻く状況も、まだまだ変化することがあるとすれば、試行錯誤することも当面続きそうです。
私も日々の仕事の中で、前向きに試行錯誤を続けていきます。
今回のコラムが少しでもお役に立てれば嬉しく思います。