集中したくとも集中できない?音がもたらす困り事と、その対策について

音にまつわる困りごと

発達障がい者が感じる音に関する困りごとはしばしば、「感覚過敏」として表現されます。これは、他の人には特に気にならないような些細な音が気になったり、周囲の音が他の人が聞こえている音よりも大きく聞こえるなど、音に対する感受性の違いとして説明されます。筆者も些細な音が気になりストレスに苛まれる事もありますが、実はそれとは異なる現象で困る事が多々あります。

今回は分かりやすそうで分かりにくい、発達障がい者が感じる音にまつわる困り事と、その対策方法についてご紹介します。

他人の愚痴が丸聞こえ?


電車に乗っている時、皆さんはどう過ごされますか?
本や新聞を読む人、スマホで動画を観る人、音楽を聞く人、眠りに就く人など各々、思い思いに過ごすでしょう。僅かな乗車中でも、立っていても座っていても、ある程度自由な時間が過ごせるならば安らぎを感じることもあるでしょう。

では、乗車中に好きな事は出来ず、見知らぬ誰かの愚痴を延々と聞かねばならないと言われたらどうでしょうか。聞きたくもない、赤の他人の愚痴を聞かされる訳です。あまり心地の良いものではありません。実はこれこそ、筆者が通勤時に抱えるストレスの一つなのです。

最近は新型コロナウイルス感染症対策で車内で会話される方も少なくなりましたが、コロナ禍以前は小言や趣味の話題など、次々と交わされる話を如何にしてシャットアウトするか通勤時における筆者の悩みでした。誰かの話し声が聞こえてきた時、雑音として遮断されるべき音であっても、筆者の耳にはむしろ選択的にその話し声が聞こえます。
そのため、周りの話し声が否応なしに耳に入り、それに対して無意識に集中してしまうため、読書など自分がやりたい事には一切集中できず乗車中、聞きたくもない話題に耳を貸さねばならないのです。
つまり、「集中したくとも(自分の物事に) 集中できない」というわけです。

集中したくとも集中できない?より目立つ音に集中してしまうということ

「集中したくとも集中できない」。
一見、奇妙な話ですが、筆者の困り事を一言で表すとこの様な表現になります。

そしてこれは通勤中だけでなく、職場や家庭でも同様です。以前、職場で仕事のやり取りをしていた時、数メートル離れた場所で、別の仕事のやり取りが行われていました。この時、筆者は懸命に目の前にいる相手の話を聞いていましたが、離れた場所での会話に耳が傾いてしまい、目の前で話されている内容が全く頭に入って来きませんでした。自分の意識では全力で目の前の相手の話を聞こうとしているにも関わらずです。ちなみにこの時、目の前の話者より離れた所の話者の方が声が通っており、それ故に筆者の注意がそちらの会話に向いてしまいました。

つまり、筆者は複数の音源が存在する場合、より目立つ音に注意が向くのです。この特徴は家庭でより顕著に現れます。家族で食卓を囲みながらテレビを点けていると、家族の話が全く耳に入ってきません。これはテレビの音声とは総じて聞き取りやすい音、つまり目立つ音であるため、そちらに注意が向いてしまうためです。

環境を整えることの重要さ


さて、通勤中や勤務中、家庭で他の音で集中できない時、筆者は必ずある事をします。それは「音を物理的に遮断すること」です。
最後に挙げたテレビの例が最も簡便で、テレビ自体を消したり、消音にする事で音を遮断することができます。また、職場でも打ち合わせ場所を変更したり、予め静かな場所で打ち合わせを行うことで対応できます。では、通勤時はどうでしょうか。基本的に車内は静かではあるものの、お喋りはいつ何処で始まるか分かりません。実際に乗車中、話し声が聞こえてると、筆者は車両を乗り移ったり、一度電車を降りて後続の電車に乗り換えるなど様々な対策を取っています。

しかし、時には車内が混んでおり、移動がままならない事もしばしばあります。そんな時、筆者はラジオや歌を聴いて凌いできます。様々な方法を試しましたが、周りから聞こえて来る人の声を打ち消す最良の方法は他の人の声を聞くことであると気付きました。ラジオ番組の中でも、特に常に言葉を話し続けるニュースや、間奏が少ない聞き慣れた歌などは重宝しています。

協力して対策を取ることで、働きやすくなります

今回は筆者が感じる音に関する困り事と、その対応についてご紹介しました。
特に就業面において、効率的に働くには周囲と協力して適切な対応を取ることが重要不可欠です。テレビを消したり、静かな場所に移動して会話するなど、環境を整備することは個人単体での取り組みとしては難しく、周囲の理解や協力があって初めて成立します。一方で、筆者と同じ様な特性がある方であれば、適切な対策を取るだけで業務効率向上が期待できるのです。

働き方改革が叫ばれて久しいですが、これもまた働き方改革の一つではないでしょうか。

ABOUTこの記事をかいた人

野添 浩一郎 (阪和興業株式会社 大阪本社 人事部厚生課)

1989年生まれ。2015年末、ADHD(注意欠陥多動性障がい)と ASD(自閉症スペクトラム)の診断を受ける。その後、LD(学習障害)の特性がある事も判明する。それまで自身を健常者と見做して生活してきたが、生活の様々な場面で支障を来しており、それ以降、自身の障がい・特性を認めた上で活かすようになった。永らく、自身の特性から低い自己肯定感に苛まれていたが、大学院時代に知り合った留学生たちと、留学先の米国で自己肯定感を高めることになる。2016年末より現職。