今回ミルマガジンでは、三重県伊勢市で就労継続支援B型事業所「クロフネファーム」が2021年6月から新しく始めれらた『キリンのタマゴ』を取材しましたのでご紹介します。
クロフネファームさんは以前にもミルマガジンでご紹介しています。
2020年は新型コロナウイルスにより多くの企業が被害を受けました。クロフネファームも例外ではなく、これまで就労継続支援A型事業として活動されていた福祉サービスが就労継続支援B型事業への変更を余儀なくされました。
取材では、新型コロナウイルスがまん延する世の中でも前進することを避けず、これまでのご縁から新たな事業『キリンのタマゴ』が誕生した経緯について、代表の案浦豊土氏にお話をうかがいました。
※リモートによる取材
新型コロナウイルスの2020年
《話・案浦氏》
私どものクロフネファームはビュッフェスタイルのレストランとしてスタートし、地域の方々をはじめ全国からご来店いただくお客さまに支えられながら営業してきました。
そのような中、2020年に流行した新型コロナウイルスの影響により、飲食業界は大きな被害を受けることになり、我々の事業も例外ではありませんでした。
売りであったビュッフェスタイルは人同士の接触や飛沫による感染が考えられることから、客足はどんどん遠のいていきました。クロフネファームは歓送迎会の季節でもある春に最も売り上げが大きくなるシーズンだったのですが、その時期と新型コロナウイルスの広がりが重なったために、予約専用として設けていた電話にキャンセルの連絡が次々と入って来るような状況でした。また、夜の営業時間帯も貸し切りによるご利用が多くあったところへのキャンセルは本当に大きなダメージでした。
当初は「新型コロナもすぐに治まるんだろう。」と軽く考えていたのですが、事態は収束するどころか感染者が全国に広がり続け、レストランもいつから再開できるのか分からず、不安がどんどん積み重なっていました。
そのような中、ビュッフェができないなら別の方法による食事の提供を考え、先ずはお弁当販売にチャレンジをしました。ショッピングセンターなどの協力を得ながら、近辺の飲食店さんたちと一緒にお弁当の販売ブースを出しました。最初の4~5月頃は応援してくださる方々の購入もあったのですが、食材や価格の面からお弁当屋さんと比べても競争で負けてしまいなかなか利益を出すことができずにいました。
次に、緊急事態宣言などで外出を控えるご家族や都会でひとり暮らしをする世代をターゲットにしたドレッシング・ご飯のお供を開発し、オンラインでの販売を始めました。お中元の時期と重なったこともあって順調な滑り出しでした。時期的な繁忙に頼るだけではなく、スーパーや道の駅などの対面のお店でも販売を始めたのですが、掛け率が高く、売れ残りの返品もあるため思うように事業として軌道に乗せることができず本当に苦労しました。結局、売上は前年比90%減まで落ち込むことになりました。
また、就労継続支援B型に事業に切り替えたのもちょうどこの時期でした。元々は就労継続支援A型事業だったため、事業の切り替えに伴い我々のもとを去る利用者もいました。その方たちが次の就職先となるところをできる限り支援する形で送り出すことになりました。
そのような中、スタッフからサービス業を望む声が聞かれるようになったのですが、やはりこのタイミングで飲食店を始めるのはハードルが高いと判断し、テイクアウトをメインにしたお店を始めることにしました。最初は、豆腐ハンバーグや米粉パンなどのアイデアを検討しているときにあるきっかけから『キリンのタマゴ』が生まれました。
ご縁から生まれた『キリンのタマゴ』
今年の4月から知り合いが岐阜で始めた焼き芋屋さんに修行を兼ねてお店の手伝いに行くことになったのですが、仕事を通して多くの気付きがありました。
例えば、「焼き芋を作る作業内容はいくつかの工程があるので障がい者の仕事の切り出しがしやすい」や「食材をたくさん仕入れるビュッフェと違い、仕入れはサツマイモのみで尚且つ捨てるところがほとんどない」といった点が新しい事業を探していた私たちにとって良いヒントになりました。
クロフネファームのある地域の周辺には病院が多くあるのですが、ゆっくりとお昼休憩を取れない看護師さんをターゲットにすることができませんでした。また、若者多いのですが、数千円のランチを出すお店はどうしても敬遠されてしまいます。ところがサツマイモを使ったテイクアウトメニューを提供するお店にすることで、時間に制約のある看護師さんや若者はもちろん、これまでもお客さんだったママさんたちにもご利用いただけるお店にできると確信しました。
もともとサツマイモはサイドメニュー程度に考えていたのですが、焼き芋屋さんでの修行がもとでサツマイモの魅力を強く感じることができました。
サツマイモ以外の食材を活用したスイーツも提供することになっています。近くの施設でのイベントに参加した時にスタッフが地元の農家さんたちと仲良くなるのですが、有難いことに売れ残ったお野菜をいただくことがありました。それらのお野菜を使って料理の試作品を作り、良いものができればその農家さんからお野菜を購入することにしています。
改めて、地域の方々との関係作りの大切さを感じました。
新たな役割として生まれた『キリンのタマゴ』
『キリンのタマゴ』というネーミングはサツマイモを焼くストーブから取りました。修行に行っていた焼き芋屋さんでは、焼き芋を焼く時に大きな坪のような窯を使って調理をしていたのですが、私たちのお店に同じ窯を置くことは難しかったこととせっかくであれば焼き芋を焼くところ近くで感じてもらうようなライブ感のあるアイデアを考えていました。
その時に出会ったのがペレットグリルヒーターのきりんさんでした。
間伐材や製材くずなど、非化石燃料を用いたストーブ。環境にやさしい点から近年注目されている。
大き過ぎず、組み立ても簡単ですし、キリンの形をしたストーブから卵が生まれるように料理が出来上がるところから『キリンのタマゴ』というネーミングが生まれました。
現在は、サツマイモを原料にしたスイーツでお店の名前でもある「焼き芋・キリンのタマゴ」や「キリンのタマゴの飲むプリン」などを販売し、今後も新しいスイーツの開発に力を入れていく予定です。(※通販でも購入可能)
これまでのビュッフェスタイルだったクロフネファームとの違いはレストランからテイクアウトへと業務内容が変わった程度で「障がい者が生き生きとはたらくシーンを作る」という考えは変わっていません。障がいのある人たちが社会との接点を持つことができるのは接客業ではと考えて飲食店を始めました。これからも障がい者がはたらき続けられる居場所でありたいと思っています。
今後、この事業が軌道に乗るようであれば更に新しいことにチャレンジしていきたいと思っていますのでこれからも応援よろしくお願いします。
今回の新型コロナウイルスで大変な経験をしたところは数えきれません。
そのような中からあるきっかけをもとにチャンスを掴み、新しい事業をスタートさせることができたクロフネファームの『キリンのタマゴ』。事業は始まったばかりですが、これからの活動が非常に楽しみです。
ご協力ありがとうございました。
URL:https://kurofunefarm.com/
所在地:三重県伊勢市小木町560-8
オンラインショップ
URL:https://kurofunefarm.thebase.in/
代表 案浦氏Facebook
URL:https://www.facebook.com/toy.ottoman